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ささやか /ロク刹(00)
(ロックオンBD小説)


 ピーンポーン...
 刹那の部屋のインターホンが鳴った。モニターを見ると隣に住んでいる少年が立っていた。
「何だ」
「あっ。隣の沙慈・クロスロードだけど、あの、もしよかったらウチで一緒にひな祭りパーティしない?食事もたくさん用意してあるし、あの」
「ひな祭り…」
「あぁ、そっか。日本にはそういう風習があるんだって。3月3日は女の子の日で、あ、5月には子供の日って言っておと」
 ブツッ
 刹那は沙慈の話の途中で急にモニター音声を切ってしまった。
 沙慈は少し混乱した。自分は今、彼に何か気に障るようなことを言っただろうかと。
 そしてドアが開いた。
「あ、あの僕何か」
「すまない。用事を思い出した」
 沙慈と刹那が話していると隣の部屋、沙慈の部屋のドアが開きルイスが顔を覗かせ、沙慈に声を掛けてきた。
「ちょっと沙慈、いつまで待たせるのぉ!」
「あ。ごめん」
「そんな奴誘ってもどうせ来ないわよ」
「ちょっと、ルイス」
「…ありがとう」
「は?」
「え?」
「お前のおかげで思い出した」
「え、あ」
 刹那はそのまま走り去って行った。
 沙慈は刹那が走り去って行くのを追って見たその方向に目を向けたまま、もうそこにはいない刹那に向かって言った。
「どういたしまし、て?」
「……」
「……」
「何かよく分かんないけど、アイツでもお礼言ったり出来るのね。絶対言わなそうなのに…」
「ルイス、そんな…」
「まぁいいや。早く戻ろ、沙慈」
「あ。うん」
 刹那は走りながら自分が日々にどれだけ無頓着だったのか思い知った。
 その日の日付なんて今まで気にした事なんて1度も無かった。でもこの日だけはちゃんと覚えていようと思っていたのに…。忘れていたわけじゃない。ただ今日がいつなのかが分かっていなかった。

* * *

 ――数ヶ月前・トレミー内
「ティエリア」
「何だ。刹那・F・セイエイ」
「…。お前、ロックオンの誕生日を知っているか?」
「ロックオン・ストラトスの?…知らないな」
「嘘をつけ知っているだろう。教えてくれ」
「俺たちには守秘義務がある。お前も分かっているだろう」
「それはそうだが…」
「そんなに知りたければ俺にではなく、ロックオン・ストラトス本人に聞けばいいだろう」
「それはダメだ。ロックオンには聞けない」
「何故だ?…何だ喧嘩でもしたのか?」
「そうじゃない。秘密で祝ってやりたくて…」
 うつむき口ごもりながら話す刹那を見てティエリアはやれやれといった感じで刹那に言った。
「まったく、お前たちの恋愛事情に俺を巻き込むなと言っただろう」
「ん。…でもお前たちだってそうじゃないか」
「何?」
「アレルヤはロックオンに何かいろいろ話しているぞ」
「なっ///!それは俺じゃない、アレルヤ・ハプティズムがだろう」
「…。アレルヤはロックオンと話している。俺はティエリアと話している。これでおあいこだ」
「それ何か違う気がするぞ刹那。…まぁいい教えてやる。ただし他の人間には一切言わない事が条件だ」
「ああ」
「…3月3日だ」
「そうか。ありがとうティエリア」

* * *

 3月3日…ちゃんと覚えていたのに…3月3日だということは…。
 刹那は走った。ひたすら走った。辺りは薄暗いが過ぎ少しずつ黒い闇がましてきていた。

 ピーンポーン...
 インターホンが鳴り、ロックオンがモニターを見るとそこには誰もいなかった。
 刹那はカメラに映らない壁へと寄りかかっていたため映っていなかったのだ。
 悪戯か?とも思ったがロックオンは何かに駆られ玄関のドアを開けてみた。その瞬間、刹那はロックオンへと抱きついた。
「うわっ!って、おい刹那?どうした?」
 刹那からの返事は返ってこない。
 混乱しつつも取り合えず中に入ろうと、刹那を支えながら体の向きをかえロックオンはドアを閉めた。
「で。どうしたんだ、刹那?」
 ロックオンが優しく聞いてくる。
「……」
「ん?どうした?」
「…ロックオン、ごめん。俺、ちゃんと祝おうと思ってたのに…」
「祝うって…まさか俺の誕生日?」
 刹那はコクンと頷いた。
「何も用意してない…」
 ロックオンは微笑みながら言う。
「…十分だ。お前が来てくれた、それだけで十分だ。」
「でも…」
「必死になって走ってきてくれたんだろ?バスでも何でも乗ってくりゃいいのに、そんなこと考える暇もなく、走ってきてくれたんだろ?お前の家から結構な距離あるのに。だから、お前が来てくれた、それだけで十分だ。ありがとな、刹那」
 自分は何もしていないのにロックオンが幸せそうな顔をするから刹那はそれ以上何もいえなくなった。
「ほら、上がれよ刹那。疲れたろ」
「あ、あぁ。……ロ、ロックオン!」
「うわっ!何だよ驚かせるなよ。どうした?」
「俺、何も用意できてないからロックオンのお願い何でも聞くよ」
「へぇ〜、何でもねぇ」
「あ。俺に、出来る限りのことを…」
「よーし、じゃあ…」
 ロックオンが刹那の側に歩いてくる。そして腰を屈め耳の元で囁く。
「今日はこのままずっと側にいてくれ」
「…それだけでいいのか?」
「あぁ」
「…分かった」
 刹那は少し考えたがすぐに笑顔でそう答えた。
 刹那はまだ知らない。いや、知る日が来るのだろうか?人前で本当の笑顔をほとんど見せることのないその笑顔を自分だけに向けられているとがロックオンにとってどれほど嬉しいことなのかということを…。



終。

あとがき


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