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不意 /ティエアレ(00)
(アレルヤBD小説)


 宇宙(そら)では時間が曖昧だ。
 季節もなければ時間の変化もない。
 日が昇り、沈むということがないのだから。
 そんな中でも時間は過ぎていく。
 かといって時間の流れを感じていないわけではない。
 ミッションで地上に行き時間の流れを感じることはある。

 僕たちが今いる状況の中で祝い事なんてありえない。
 ましてや個人的なことでなど。
 そもそも僕らは個人情報が明かされていない。
 自分以外がその日を知るはずがない。
 もっとも僕は今まで生きてきてその日に何か特別な事があったことはない。
 今年も何もなくその日は過ぎて行くのだろう。

 今日はミッションが遂行されることはなかった。
 僕たちの日常じゃ割りと穏やかな日だったんじゃないかな。僕はそう思う。
 刹那とティエリアも喧嘩していなかったし。
 それほど多くの言葉を交わしたわけではない。
 けれどそれなりに今日はみんなと話しをしたと思う。
 今、僕が送る日常、過去の生活。それを考えるとただ穏やかに人と言葉を交わし、この日を過ごすのは十分に幸せと感じる。
 だけど1人だけ、1番言葉を交わしたかったその人とは結局言葉を交わさず終いだった。
 いつもなら憎まれ口が返ってくることもあるが、今日は一言も返ってこなかった。

 そろそろ今日が終わる。
 僕は自室へと戻る。
 部屋の前には今日1日言葉を交わさなかった人物が立っていた。
 僕は何も言わない。
 彼も何も言わない。
 部屋の中で僕は少し不機嫌な態度をとってみせた。
 今日がその日だからとかいうわけではない。
 ただ、恋人が話しかけても無視というのはどうなのだろう。
 もともとそういう人ではあるし、みんなに隠しているということもある。
 だけど…
 ベッドに腰かけ、下を向いて僕は考えていた。

「アレルヤ」

 急に名前を呼ばれ僕は驚いた。
 まさか向こうから切り出してくるとは思っていなかったから。
 彼は僕の横にスっとやってきた。

「アレルヤ」

 もう一度名前を呼ばれ、立っている彼の方を見上げた瞬間唇を塞がれた。

「っんは、何、ティエリ」
「おめでとう」
「え…?」

 僕がティエリアと名前を呼び終える前にティエリアは今何と言った?
 僕は自分の耳を疑った。
 ティエリアは更に言葉を続ける。

「誕生日おめでとう」

 時間(とき)が止まったようだった。
 こんなに嬉しい誕生日は生まれて初めてだった…。



終。

あとがき


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あきゅろす。
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