予想外 /ZC (ザックスBD小説-2012-) 「なぁクラウド、明日なんの日か知ってる?」 「明日?」 「そう、明日」 「明日、って…ザックスが任務から帰ってくる日だろ?」 「あーうん、それもそうなんだけど…ほら、ほかに…」 「さあ?なんかあったっけ?それより気ぃ抜いて怪我するなよ?」 「え?あ、うん」 「じゃあ帰りも気を付けてこいよ」 じゃあな。そう言うとクラウドは容赦なく電話を切った。 まだ耳に電話を当てたままのザックスはツーツーという無機質な音を聞きながら淡い期待が消えゆく切なさに哀愁を漂わせていた。 (…うん…やっぱクラウドだしな…) もしかしたらと淡い期待を抱いてはいたが、やはりクラウドはクラウドで…。 ザックスの淡い期待は打ち砕かれたが、自分がミッドガルにいない間も特に変化はないことを感じられたのでそれはそれで安心を得られて嬉しくはあった。 声が聞きたかったとか、話がしたかったなどと電話をするとそんなことで電話をしてくるな、任務に集中しろとクラウドが怒るものだからザックスは長期任務中にクラウドに電話をすることを我慢している。 だから今の電話で変わらぬ様子のクラウドに安心したのだ。 (まぁ…いいや、クラウド元気そうだったし。帰ったら直接言ってやろう。そのためにも…) 「さっさと片付けますかね!」 その日、ザックスはきっちり任務を完遂させると翌朝ミッドガルへと発った。 ザックスがミッドガルへと入ったのは夕方前だった。 そのままクラウドのところへ直行、のつもりだったのだがクラウドが帰ってくる時間にもまだ早い…。 というわけでザックスは一旦自分の家に帰ることにした。 そしてシャワーを浴び着替え、適当にくつろぎクラウドが帰ってくる時間を見計らって家を出た。 「〜♪」 「ッ!? ザックス!?」 「おっ!よお、クラウド。ただいま」 帰り道でクラウドを待っていたザックスはそれに気付いたクラウドに名前を呼ばれると片手を上げながらニコやかに答えた。 「なっ、なんで!?」 「え?なんでって今日は俺帰ってくる日だってのは知ってたろ?」 「それは知ってるけど夜になるって…!」 「ああ、早めに片付いたんだ!」 得意気にニカッとなつっこい笑顔をクラウドへと向けるザックスとは対照的にクラウドは顔色が冴えないようだ。 「どうかしたかクラウド?」 「あっ、いや…」 「………。クラウド…お前もしかして…」 「なっ、なんだよ!」 「俺のこと言えないくらい部屋散らかしてる、とか…?」 「…は?」 内心何を言われるのかとドキドキしていたクラウドはバカげたザックスの問いに間の抜けた声が出た。 ザックスは1人頷きながら何か呟いていた。 その様子を見ながら冷静さを取り戻したクラウドは声をあげた。 「あんたじゃないんだからそんなことあるわけないだろ!」 「え?違うの?」 「違う!」 「じゃあ何?どうしたの?」 「それはっ!」 「ん?」 「こんなとこで待ってるなんて思わなかったからビックリしたんだよ」 いいから行くぞと言ってクラウドはザックスの隣をすり抜けて歩き出した。 それを追いかけてザックスもすぐにクラウドの隣に並んで歩く。 部屋につくとクラウドは奥の寝室へと入っていき扉を閉めてしまったので入ってくるなということだなとザックスはリビング側のソファーに腰かけてクラウドが出てくるのを待った。 暫くするとクラウドは着替えを持って出てきた。 「俺、シャワー浴びるから」 「ああ。じゃあ俺なんか食いもんでも…ッテ!?」 ザックスの頭に何かが当たる。 「あげる…」 「え?クラウド!?」 クラウドは去り際にザックスに何かを放り投げバスルームへと消えていった。 ザックスはクラウドが投げてきたその包みをそっと開けてみる…。 「うっわ…マジ…?」 ザックスは左手で口許を覆い予想外の嬉しさにうちひしがれる。 そして… バンッ!! 「クラウド!愛してる!一緒に風呂入ろうぜ!」 「はあ!?バカ!出てけよ!」 予想外 “ザックスへ 誕生日おめでとう あんまり無理するなよ” (素直じゃないキミの想いを まるごと素直に受け止めよう) end. [*前へ] |