あなたの為に /ZC (ザックスBD小説) 「はぁぁ〜〜」 「……どうしたザックス?」 「ん?いや全然大したことあるから大丈夫、気にするなよカンセル」 「………」 沈黙のあとカンセルがそうかと言い放つのを見計らっていたかのようにザックスはカンセルの言葉に自分の言葉を被せるように言った。 「そうなんだよ、なんか最近クラウドがおかしいんだよ」 あのな〜と最近のクラウドの様子についてザックスは語り始めた。よそよそしいとか側に寄らせてくれないとか忙しいと言われて最近は殆んど会っていないとか…。 カンセルはザックスの話を全て聞き終えたところで冷静に口を開いた。 「なぁザックス…」 「おかしいよなぁクラウド…」 「聞けよザックス。どこがおかしいんだ?クラウドは人見知りで馴れ合いが苦手だしそれによってベタベタされるのも苦手だろ?前からそうだろ。会えないのは任務続きだから。おまえ最近暇だから一方的に寂しいだけだろ。おまえが遠征に出ている時の方がよっぽど会えてないだろうが」 カンセルは言い終えると俺もう行くわと食べ終わった食器を持って立ち上がった。立ち上がった自分を見上げるザックスに向かって何間抜け面してんだよと言い残して。 ザックスは間抜け面と言われたことなどよりも自分の話に対するカンセルの返答を頭の中で繰り返していた。冷静に考えると確かにカンセルの言っていることは合っている。確かにそうだ、クラウドはそういうやつだし、相手を待つという時間も遠征に出た自分のことを待っているクラウドの方がよっぽど長い…おかしなところなどどこにもない。単に自分のわがままなのか…。 しかしそれでもなにか… (う〜ん、そうなんだけどなんか違和感?ある気がするんだよなぁ〜) * * * 「なぁクラウド、俺は変か?」 「は?…何言ってるんだあんた…」 「じゃあクラウドが変か?」 「何?喧嘩売ってるの?」 「俺がクラウドに嫌われたいわけないだろ〜、こんなに好きなのにぃ」 「ッ!!」 コーヒーカップを片付けにキッチンへと向かっていたクラウドはザックスの突然の発言にソファーに突っ伏しているその人物に振り返った。 「きゅ、急にそういうこと言うなってば!」 顔を赤らめながらその背中に言い放ちまたキッチンへと歩き出した。 ったくザックスは…と一人でブツブツ言いながらクラウドはコーヒーカップを洗う。 無反応のザックス…気になり顔を上げてリビングを見るとザックスがいるはずのソファーは空だった。 すると不意に後ろから抱きしめられた。 「!? ちょっ!いつの間に!気配絶って近づくなよ!」 「ん〜俺ソルジャーだし〜」 「力乱用するな!」 離れろ!とクラウドは必死にザックスを自分から剥がそうとする。ザックスはそんなクラウドをものともせずクラウドの首筋に顔を埋め抱きついたままだ。 「離せよザックス!」 「いいじゃん少しくらい」 「じゃあ少し抱きついたからいいだろ!終わりだ!」 「なんだよケチ〜…ん?」 ザックスはスンスンとクラウドの匂いを嗅ぎ始めた。 「なっ!何してんだよザックス!やめろよ!」 (甘い…匂い?) 「やめろってば!」 クラウドはなんとかザックスを自分から引き剥がした。 自分から離れたクラウドを見るとどこか戸惑ったような焦ってるようなそんな様子が伺えた。 「なぁ、クラ…」 「あ!うわ!時間!俺もう行かなきゃ!待たなザックス!」 クラウドはそのまま部屋を飛び出していってしまった。1人取り残されたザックスは呆然と立ち尽くしていた。 (甘い匂い…焦ったような態度…ここ最近の様子…。え…クラウド…) 「彼女…できた?」 * * * あれからクラウドにはまともに会えていない。電話や社内で何度か顔は会わせてはいるが2人きりでは会っていない。正直ザックス自身戸惑っていた。対人関係が苦手なクラウドが恋人を作ったなど喜ばしいことではないか。それが彼女ならば自分との関係よりもずっと健全だ。自分との関係を終わらせ彼女とこの先を歩んだ方がクラウドの為だと思う。…その一方でやはりクラウドのことが大好きで離したくないと思う自分がいるのだ。 (しっかりしろよ俺…) その数日後クラウドから食事に誘われた。クラウドの方から誘ってくるのはとても珍しい。そんな滅多にないクラウドからのお誘いがあったときは本当に嬉しい、はずなのだが今はどうにも喜べない。別れ話ばかりが脳裏に浮かぶのだ。 「なぁ、ザックス聞いてる?」 「…ん?あぁごめんなんだっけ?」 「だから今日は俺が奢るからザックス何食べたい?」 「あぁクラウドが食べたいものでいいよ。てか俺が出すって」 「ザックスが何食べたいか聞いてるんだよ。それに今日は俺が出す。誘ったの俺だし」 この間まで忙しかった分の臨時給料が出たんだとクラウドは嬉しそうに笑っていた。 食事代も自分が出すというクラウドにザックスは本格的に別れ話かな…と内心項垂れながらも笑顔で何が食べたいかを伝えた(クラウドが好きなものを伝えた)。 食事の最中クラウドは至って普通で、他愛ない会話を交わして、そして食事も美味かった。が、ザックスの心のうちは曇ったままだった。食事中には別れ話は振られなかったものの店を出てから魔法について聞きたいことがあるとクラウドの部屋に誘われたのだった。 (そら人に聞かれたくないもんな…) 適当に座っといてとクラウドは魔法書本棚から引き出し、今度はお茶をいれてくるからとキッチンへと姿を消した。 「言っとくけど俺は上手く説明できねーぞ、感覚派だから」 「うん、期待してないよ」 「おまっ!じゃあ俺に聞くなよ! !?え…」 「誕生日おめでとうザックス」 「は?え?何……」 振り返るとクラウドがケーキを持って立っていた。 やっぱり完璧に忘れてたんだなとクラウドは笑顔で言いながらこちらへ近づいてきてケーキをテーブルの上に置いた。…ケーキには“Happy Birthday ZACK”とメッセージがあった。 「誕生日おめでとうザックス。これ、その…一応俺が作ったんだ。俺、料理とか全然できないけどザックスに作ってあげたいなって思ってその…」 「………」 「だからその…凄く練習しててザックスと会う時間減っちゃって…ごめん。驚かせたくて内緒でやりたくて…」 「………」 「…ザックス?」 「え…俺の為?練習してた…?え…クラウド彼女出来たんじゃ…」 「はぁ!?なんだよそれ!お、俺が彼女なんか作るわけないだろ!ザックスがいるのに!」 言ってしまってから恥ずかしくなったのかクラウドは今のは違うんだとかなんとか顔を赤くしながら俺はもうそんなのどうでもよかった。考えるより先にクラウドを抱きしめていた。 「わっ、ちょ、ザックス!」 「ありがとう…すげー嬉しい…」 「…よかった。面倒くさがれたらどうしようって少し不安だったんだ…。よかった…」 「すげー嬉しいよ、ありがとうクラウド。こんな嬉しい誕生日初めてだ」 抱きしめていたクラウドを解放して見つめあい俺はそっとクラウドに口づけた。そして額を合わせ愛してると呟いた。 「ケーキ、食おうか」 end. [*前へ][次へ#] |