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雨の幸運 /ZC

朝は晴れていたのに、下校する頃には雷雨だった―――。


クラウドは玄関で佇んでいた。

(走って帰るしかないか…)

そんなクラウドに、後ろ髪の長い赤毛の上級生が声をかけてきた。

「よう、クラウド。傘がないのかよ、と」

彼はクラウドに傘を差し出してきた。

「なんですか?」
「貸してやるぞ、と」
「それじゃあアンタが濡れるじゃないか」
「オレはいいんだぞ、と。水も滴るいい男ってやつだ。それよりもこんな雨の中、傘もなしに美人を帰すわけにはいかないぞ、と」

クラウドはイラッとした。

「そういうことは女子に言ってやったらどいですか」

そう言い捨てると、クラウドは雨の中に飛び出した。

「…やれやれ、相変わらずつれないヤツだな、と」


* * *


道路は雨量が多すぎて水溜まりどころではない。
クラウドはその中を必死に走っていたが、あまりの雨に、一旦雨宿りをすることにした。

(ホントすごい雨だな)

すでに全身はずぶ濡れだった。

雑多の中へ行きたくないクラウドは、公園の遊具で雨を凌いでいた。


『ワン!』
「!?」

振り向くと箱の中で何か動くものが見えた。
近付いて箱の中を覗くと、そこには小さな茶黒の子犬がいた。

「オマエ…捨てられたのか?」

クラウドは箱の中から子犬を抱き上げると、目を見ながら話した。
そうか、と頭をなでてやり、止まない雨の中クラウドは暫く子犬と遊んでいた。

すると突然一人の男が遊具の中へと駆け込んできた。

「ふー、やっぱ雨つえーな、ずぶ濡れだぜ」
「あっ…」
「ん?」

声をあげたクラウドに気が付き、男が振り返った。

「おお!」

男は勢いよくクラウドの側へと駆け寄ってきた。

「可愛いな、オマエの?」
「あ、いや、ここに捨てられてたみたいで…」
「そっか。ん?オマエ…たしか仮入部んときの…」

クラウドは驚いた。まさか彼が自分のことを覚えているだなんて思ってもみなかったから。
彼はクラウドがこの学校に入学したときからの憧れの人だった。

「あの、オレのこと覚えて…」
「ん?あぁ、仮入部期間中毎日来てたし、オマエ綺麗な顔してっからさ」
「…そう、ですか…」

クラウドは綺麗とか、美人と言われるのが嫌いだ。
小さな頃に嫌な思い出があるからだ。

「どうかしたか?」
「いえ、別に…」

それを憧れの人に言われたのはやはり…ショックだった。
子犬が心配そうにクラウドを見上げている。

「あー…、やっぱ嫌だよな、男なのに綺麗とか言われるの」
「別にいいです…よく言われるんで…」

気まずい空気になり、沈黙が二人を包んだ。

(どうしよう…気まずい…)

気まずい空気の中、クラウドはどうすることもできないでいた。
すると彼が話し出した。

「でもさ、いい方に考えたらどうだ?」
「え?」
「綺麗とか言われんの嫌かも知んないけどさ、そのおかけでオレ、オマエのこと覚えてたんだぜ」
「…」
「仮入部期間中毎日来てたし、スゲー真剣に見てたからさ、オマエが入部してくるの楽しみにしてたんだぜ、オレ」
「え?」
「だからさ、オレたち仲良くなれると思うんだ。なっ!」

差し出された手を見つめてクラウドは思考が追いつかなくなっていた。

(オレと仲良く?え、だって、オレなんか…)

「オレのこと嫌いか?」
「そんなことない!」

大きな声を出したクラウドに少し驚いていたが、彼は笑顔でもう一度手を差し出してきた。

「仲良くしようぜ。なっ!」

クラウドは彼の目を見たり反らしたりしながら、戸惑いながらもゆっくりと手を差し出した。
手を重ね合わせ握手をする二人。
クラウドから飛び下りた子犬が二人を見上げながら嬉しそうに尻尾を振っている。

「よろしくな。オレはザックス」
「オレ…クラウド」

あんなに激しく降っていた止みそうにない雨はもう止んでいた―――。





おわり

あとがき


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あきゅろす。
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