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空にうつるもの




この時の母の言葉は、今でも俺の中に在る。




ーーーーー




《あのね、蓮李。人と関わる時に大切なのは…、その人のありのままを見ることよ。



人の噂、格好や容姿、聞いたり見たりしただけのものは、案外その人のことが、分からないものなのよ。》



《どうして…?
お母さん………。》



《そうね……。例えば、噂の中には、他の誰かが嘘をついていて、広がったものがあるの。



それこそ、あることないこと…。



全てが嘘とは限らないけど、全てを簡単に真実ととらえるのは危険だわ。それは分かる?》


《うん。なんとなく。》




《そして、第一印象が怖そうな人でも、人を思いやれるとっても優しい人かもしれないわ。



人の良さそうな、そんな顔で近づいて来て……、平気で人を傷つける人もいるのよ。



これは例え話だけど、見た目だけではどんな人か分からないってことよ。



それに、容姿は生まれた時からのものでしょう。多少の顔つきが変わったとしても、その顔は一生ものよ。



それだけでは、相手の人生や生き方、考え方が分からないとは思わない?蓮李。》



《……うん。
それだけだと、分かんない気がする。》




《ふふ。……いい子ね、蓮李。




いい?全ての人が、いい人とは限らないわ。



姿・形の上辺だけを見ずに、まず相手のなかみを見極めなさい。




それにね、いいところも悪いところも、両方持っているのが人間よ。



完ぺきな人間なんてこの世の中にはいないのよ。



全ての人を信じろとは言わないから。



蓮李自身の目から、その人を見極めた上で、あなたが信じたいと思える人を信じなさい。



その人の、いいところも悪いところも知った上で、ありのままのを受け入れてみせなさい。…………蓮李。》





母の言霊の一つ一つが、心に静かに染み込んできて……、素直に受け入れることができる………。


頭を優しく撫でてくれる母の手は、温かかった。





[*欠月][満月#]

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あきゅろす。
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