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雅恋 僕と後輩シリーズC
*雅恋 壱×参+弐
*「僕と後輩〜」シリーズ
*壱号と弐号の会話が中心


〜〜〜〜〜


「ほんま、参号はかわええなぁ」


もっさりと山積みになった落ち葉と格闘する少女を見つめながら、弐号がうっとりたした声で呟く。ずいぶんとくだらない、大きな独り言だ。そんなことを考えながらぼんやりと庭を見ていたら、“壱号もそう思うやろ?”と思い切りくちばしで袖を引っ張られた。どうやら独り言ではなく、僕に話しかけていたらしい。


「別に、僕は可愛いなんて思わない」

「またまた〜、そんなこと言うて。わい知ってるんやで?」

「な、何がだよ…」

「それはもちろん、ときどき壱が参号のこと優しい目でジィーッと見つめてることに決まってるやないか」


――ちょうど、今見てるみたいにな!
なんて、陽気に笑いながら羽でパシパシと僕の背中を弐号がうっとおしいだとか。落ち葉を片付けるどころか散らかしているようにしか見えない後輩がまぬけだとか。
そんなことが全部、一つ残らず吹っ飛んでしまうほどに、唐突に頭の中が真っ白になる。


誰が?
誰をどんなふうに見るだって?


言葉の意味が分からずに、何度も何度も心の中で繰り返す。

僕が参号を見ている。
それも、優しい目で。
今みたいに見ている。


「っ…!!」


思考と言葉が繋がった瞬間、今まで大人しかった熱が急激な勢いで体中を巡り出す。

なんで。
どうして。
僕がそんな風にあいつを見なくちゃいけないんだ。

睨み付けて抗議するけれども、実際に参号を見てしまっていた後では何の意味もない。にやにや気持ち悪い笑みを浮かべながら楽しそうに僕と参号を何度も見やる弐号。その他意にまみれた視線を受けて、身体の熱は高くなる一方だ。


「壱ぃ、お顔が真っ赤っかやで〜?」

「うっ、うるさい!」

「どうしたの2人とも?」


ぎゃあぎゃあと騒がしい空間に、響いたよく通る凛とした声。驚いて足蹴にしていた弐号から視線を上げれば、すぐ側には、遠くで掃除をしていたはずの少女の姿。予想外の近さに、心臓が一際大きく跳ねた。
今まで何ともなかったのに。気付かなければいつまでも無意識のままでいられたのに。弐号とのやりとりのせいで、嫌でもその存在を意識してしまう。
絹のように柔らかな黒髪。スラリと伸びたしなやかな四肢。此方を伺うように見つめる大きな瞳と視線が合うだけで、すぐに身体が熱をもて余す。薄紅色の唇が僕の名を紡ぐ度に、胸の奥がじわじわと痺れていく。


―――こんなはずじゃなかった。
こんな気持ちなんて、式神である僕が抱くはずがなかったんだ。

最後の反抗心も、まるで中身のない言い訳のように心を上滑りする。ただ、その代わりに心の奥に積もりゆくもの。それは今まで――参号に出会うまでは知る由もなかった、新たに生まれた或る一つの感情だった。


僕と後輩と初恋前線

(愛だの恋だのそんなもの、)

(くだらないと思っていたのに)

END





ブログより再録SS。
壱号、ついに恋心に気付くの巻。
いつの間にかシリーズになって4話目になりました。
弐号を交えてあと数話続きそうな予感。

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