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あいまいディナー(ノル亜貴)
*パニパレ 亜貴とノル
*ノル√にはまだ未突入
*球体は執事で料理人で策士


〜〜〜〜〜


「ノルの作るご飯って美味しいよね」


食卓に所狭しと並べられた料理を頬張りながら、この素晴らしい味を作り出した張本人へと称賛の言葉を贈る。味噌汁のお出汁にはコクがあるし、大根の煮物も味がしっかりついてるし、ほうれん草おひたしもあっさりとしていて食べやすいし。あ、この卵焼きはだし巻きなんだ、凄く美味しい。クオリティの高い料理の数々に、箸が止まらず黙々と食べてしまう。
一人暮らしのままならきっとこんな美味しいご飯は食べられなかっただろう。というか自分ではどう頑張っても作れる気がしない。そして正直に言うと、お母さんの作る料理よりも美味しいとも思う。それぐらい、ノルの料理の腕はレベルが高い。


「ほんと、お店出せちゃうぐらい美味しい」

「それほどまでに喜んでいただけるのならば、此方としても作りがいがあります」

「私、ノルの料理大好きだよ。毎日食べたいくらい!」

「大好きなのは料理だけですか、亜貴さま?」

「えっ…!?」


摘んでいたほうれん草がお箸の間からすべり落ちた。今、何か物凄いことを言われたような気がする。おそるおそるおひたしから視線をあげると、私の隣に控えていたノルと目があった。いや、正確に言えばノルは球体でどこに目があるかは分からないので、“目があった気がする”が正解なのだけれど。更に言えばノルが一瞬だけ微笑んだ気もした。それも、心底意地の悪い笑みで。



「貴女さまがお望みならば、幾らでも食べさせてさしあげますよ。これからも、ずっと」

「あの、それはどういう…?」

「ご自由に解釈してくださって構いません。さぁ、冷めないうちに召し上がってくださいね」


落ち着いた声に込められた色に、思わずドキリと脈打つ鼓動。はぐらかされた言葉の意味を考えれば考えるほどに思考がこんがらがり、何故だかじわじわと頬が熱くなる。もしもその姿が球体でなく、例えば人間のようであったならば。きっと私はノルの顔を直視できなかったことだろう。

嗚呼、ノルが球体で良かった。

考えるべき問題やら疑問やらを全てその結論に無理やり集約して、促されるがままに再びおひたしをつつき出す。やっぱりノルの料理は美味しい。次々に箸が進み、思考が感覚へと切り替わる。ノルの料理なら言葉の通り幾らでも食べられそうな、何だかそんな気もしてきた。なんてことを考えながら料理をすべて平らげた頃には、はぐらかされた答えはそのまま、味覚の彼方へと消え去っていた。


あいまいディナー

(花より団子なお年頃!)

END




球体執事に「大好きなのは料理だけですか?」と言わせたいが為に書いたお話。
亜貴ちゃんの食い意地をはらせすぎた…。
人型verを知らない設定なので余裕しゃくしゃくの亜貴ちゃんですが、ノル√に入ったらそうはいかないに違いない。
ノルは狡い大人代表であるに一票!

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