戀 夏の終わり、少しずつ少しずつ秋が近付いてくる。 それが何を意味するのか、思い出す度に心のどこかが痛む。 刺さった棘が、じわりじわりと痛みを訴える。 常夜灯が映し出すのは、見慣れた影。 毎日一緒に歩くのが当たり前だったけど、 これもいつか当たり前にならなくなる日が来る。 少し離れて追いかけるように、その影を辿っていく。 貴方は振り返らない。 風が吹いて、秋の匂いを感じてしまえば、それは悲しみに一歩近づくしるし。 一歩一歩、一瞬一瞬、大切にしたいのに…。 どうしていじわるするようにこんなにも早く過ぎていくんだろう。 見慣れた横顔、見慣れた影、聞き慣れた声。 全てが私の心を柔らかくする。 「恋」と言うよりも、「戀」。 いとしい、いとしいというこころ。 そう、口にしてしまえば壊れてしまいそうで怖い。 だからどこかで祈ってしまう。 このままずっと、一緒に同じ空見上げられたら良いのにって。 そんな事を考えて、思わず立ち止まってしまう。 この瞬間が止まれば良いのにと…。 振り返り、貴方は一言「置いて行くぞ」と言う。 当たり前の日が、当たり前じゃなくなる…。 そう遠くない日に…。 心のどこかが痛みだす。 「置いていかないで」 無意識に出る言葉は、涙は、どこから湧き出るんだろう。 お願い、お願いだから。 置いていかないで、一人にしないで、一緒にいて。 当たり前じゃなくなるその瞬間まで、1秒でも長く傍にいたい。 星空見上げて流れ星探して願った事。 次の秋も、どうか一緒に… その願いは、もう遠の昔に叶えられないんだと知ってはいたけれど… でも、もしも奇跡があるとしたら、叶ってほしい。 だから願わずにはいられない。 期待と希望を乗せた流れ星が軌跡を描いて消えていく。 心の端が痛みを訴えながら、散り散りに乱れていく。 「いとしい、いとしいというこころ」 そう、あなたの傍にいるとどうしようもなくなる…。 → [*前へ] |