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闇に染まる、黄昏の雲




キミは僕の隣で瞳を閉じた。
閉じては開いて、閉じ、開き、また閉じる。
瞬きとはこんなにゆっくりとした動作だっただろうか。
口元はうっすらと笑みを浮かべるだけで何も言葉は紡ぐことはない。
滑稽だ。
断続的に吐き出されるのは何の意味も持ってないようだから。
それでも止まることがない其れら。
息と息の間隔が分からないくらい上ってゆく靄は、途中で風にさらわれて行方は知れない。
でも、落ち着き始めた白い吐息に安堵した。
なんと言えばいいのだろう。
今のところの感情はグチャグチャで混雑、混乱しているというのが一番近いのかもしれない。
無情に時間は過ぎつつ―そう、キミから流れ落ちていく。
そんな様子も綺麗に隠蔽しようとする白い色もキミの温かみには勝てなくて。
でも確実に侵食していった。
僕にも同じことが言えたけど、この白はまだ僕を襲うことはない。
僕に触れると透明になって反対に消え落ちていく。
こんな状況下を見つめ続ける僕の眼は、何か邪魔されているのか、僕自身が震えているのか、キミがよく見えてなかったり。ぼやけている視界。
でも、鮮明な其の色が溶けても映えているから
―キミにだけ焦点を合わせていられた。
どちらにせよ、何より白く染まりつつある肌と反対にキミの周りだけ作られて浸食を続ける鮮やかな水たまりは、僕の足元にあって、動けばそんなキミの、キミの、もう脆くも限界世界を壊してしまいそうだったし、勿論それではどこか残念で、結果的に始めから見えてなくても見続けるしかなかった。
キミは虚ろぎにまだ何を思い、何を見ようとしているのだろう。
こんな僕か?
それともその手の先にあるモノか?
ふと次の瞬間、視線が交差するよう思って自嘲的な笑みを僕も浮かべた。
キミは安らかな顔を向けてはくれたけれども、今まで何度も僕を映し出してくれた瞳は開いてくれなかった。
好きだった澄んだ純粋なその色。
久しく唇から零れ落ちた空を切る音なき声が僕の耳に届く前にキミは寝てしまった。
僕を通り抜けると視界に広がる現実は、やっぱり冷たかった。
冷めていた、覚めていない僕。
やっと動き出した僕は、まるで糸が切れたマリオネットのように、操り手を失った人形のような抜け殻でキミと向かい合った。
気づかないだけで僕も地面に染みを作っていたんだ。
そのうち、キミのと混ざり合うころには、この思考も元に戻るだろうか。
氷が溶けたみたいに。そして、溢れ出すだろう。
せき止められたダムが流れ出すかの如く。
嗚呼、認めてしまえば楽なのだろうか 、

この罪を 犯した事ヲ。

何処かへ向って逝ってしまったキミ。
僕の世界に空っぽの異物だけ残して。




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