[携帯モード] [URL送信]
闇に染まる、黄昏の雲




息遣いだけがやけに鮮明に聞こえる。
静寂に包まれた視界は、穏やかじゃない。
無が支配した世界。
見えぬだけで怯えるとは大した想像力が働いているな、
なんて内側で批評している自分に嫌気が差した。
表情なんて何ひとつも見えやしない。
けれども一つの焦点をただただ捉えているのだろう。
そこに何があろうとも、無かろうと。
尚も誇大し続ける己の中の幻。
相手も同じ状況下に立っているのか。
つまらないものだ、こういう時間は実際より長く感じる。
時の流れが一定の早さからズレることは有り得ないのに。
だが確実にそれは圧力となっていた。
殺される。頭の内側で止まることを忘れた警鐘音。
同時に生きたいと叫ぶ小さき自身。
相反するふたつの衝動に躯は停止する。
どうすることもできない。
どうしよう、とも言えない。一人、独りだ。
考えがまとまる頃には、
たった二文字で成り立つ熟語が残った。
―絶望。
そんなときに嵐は、やってきた。
吹き荒れる風は全てをその周りの世界もまとめて連れ去る。
大変な騒ぎを持ってきながら、キミは僕の真横に立っていた。
いつのまにと瞬間的に構えたけれども、
先程の緊張から解かれたこととついていけない思考のためか、
そこで意識を失った。

嗚呼―終わった、僕が倒れる。
何をいってるんだ、
これからが始まりだろう。

無意識にキミの声が脳裏に焼き付いていた。
陽だまりのように温かい色が広がった。



[BACK]



第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!