息遣いだけがやけに鮮明に聞こえる。
静寂に包まれた視界は、穏やかじゃない。
無が支配した世界。
見えぬだけで怯えるとは大した想像力が働いているな、
なんて内側で批評している自分に嫌気が差した。
表情なんて何ひとつも見えやしない。
けれども一つの焦点をただただ捉えているのだろう。
そこに何があろうとも、無かろうと。
尚も誇大し続ける己の中の幻。
相手も同じ状況下に立っているのか。
つまらないものだ、こういう時間は実際より長く感じる。
時の流れが一定の早さからズレることは有り得ないのに。
だが確実にそれは圧力となっていた。
殺される。頭の内側で止まることを忘れた警鐘音。
同時に生きたいと叫ぶ小さき自身。
相反するふたつの衝動に躯は停止する。
どうすることもできない。
どうしよう、とも言えない。一人、独りだ。
考えがまとまる頃には、
たった二文字で成り立つ熟語が残った。
―絶望。
そんなときに嵐は、やってきた。
吹き荒れる風は全てをその周りの世界もまとめて連れ去る。
大変な騒ぎを持ってきながら、キミは僕の真横に立っていた。
いつのまにと瞬間的に構えたけれども、
先程の緊張から解かれたこととついていけない思考のためか、
そこで意識を失った。
嗚呼―終わった、僕が倒れる。
何をいってるんだ、
これからが始まりだろう。
無意識にキミの声が脳裏に焼き付いていた。
陽だまりのように温かい色が広がった。
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