[携帯モード] [URL送信]
小咄





昴は、まだ寝ていた。
何故か公園のしかもすべり台の上で。
昔は、ブランコだったか。シーソーってのもあったな。
それはさておき、その時はみな同じ体勢。器用にバランスがとれている体育座り。
ただ今回、頭はうなだれいて少しでも揺れたりしたら、滑り落ちるじゃないかと思える程不安定な格好。
柔らかくしなやかな黒髪が顔を覆い、その寝顔を隠している。
規則正しい寝息に合わせて上下する肩やら背中。
梯子に似た階段に足をかけたまま、俺は目の前の昴をみつめていた。
よほど、寝に入ってるのか。
わざとらしく嘆息を漏らす俺にぴくりとも反応しない。
いつもなら、嘲笑し苦言の一つや二つ容赦なく浴びせてくるというのに。
そんな無口な姿を見ているとからかってやりたい等という雑念が心の奥底、知らない何処かから湧き出てくる。
俺は、強く勢いつけて首を左右に振り回した。そんな考え吹き飛ばすように。
それはまるで濡れた髪を乾かすように。
密かに吹いた風によって昴の髪が靡く。
隠されていたその端正な顔立ちが漆黒の闇から浮かび上がった。
黙って見れば見るほど綺麗だ。
動きを止めて、穴が開くほどその寝顔に食らい付いている俺。
これでは、ただの変態ではないだろうか。
慌てて顔を離そうとすれば、ときすでに遅し。
身体は宙に放り出されてて。
足が空気中でもがいているのだけわかったが、はっきりと自分の状況が把握したのは、地面の上だった。
突き落とされたな、これは。
納得すれば腰の辺りに激痛が。
隠すように苦笑いを浮かべながら仰ぐと、案の定。
不機嫌な昴が睨んでいた。
次は平手打ちでもきそうだな、寝ていたのはそっちなのに。
そう思ってもその言葉は鵜呑みにして覚悟を決めた。




[BACK]





あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!