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小咄




珍しいことに昴が友達を連れていた。
苗字は真白という。下の名前は知らない。昴と同い年らしい。昴もどちらかというと幼く見える質だが、真白の方はそれが顕著だ。小学生なんじゃないか、こいつ。
ツインテールには少女らしいチェック調のピンクリボンがあしらわれているし、身につけているものはまるで西洋人形からとってきたようだ。しかも、ご本人は肌も目も髪も一般より色素がかなり薄いときた。本当にそれ、だ。そういえば、昴が一通り彼女を紹介してる間、睨まれ続け――俺が促されて挨拶したら鼻で笑われた。そして再び睨まれた。敵視でもしているのか。ならされる覚えがない。

その後、頼まれてお茶とお菓子を盆に乗っけて持って行くと廊下まで少女特有の甲高い声が聞こえてきていた。よく考えてみれば昴はあまり喋るタイプではなかったからこの家にそういう声が響き渡るのを少し新鮮に感じた。
しかし、よく喋るな。昴は恐らく、相槌しか打ってないだろう。良くても首を動かす程度。普段からそういうやつだったりするから。
ほとんど間もなく少女の声が続いている。息継ぎは出来ているのか、いつしてるんだ。話題に尽きないのか。マシンガンとはこういうことか、と勝手に言葉の意味を理解して顔を手で覆い隠した。苦笑いか緩んでいるのが自分でもわかったから。
ついに昴の部屋か。お盆を片手に載せたまま、この純和風の屋敷で数少ない洋風のドア。
ノックする前に一回深呼吸。
「入るなら早く入りなさいな。この阿呆」
え? まだ戸を叩いてませんが。首を傾げている間に扉は開いた。
「昴はなんでこのような馬鹿の面倒をみてるの? 今日はいつもより一割増しに変な顔しているんですね。本当に嫌な気分になるわ」
いつもよりって初対面じゃないんですか?
「あれれ? お茶とお菓子が……て早くこっちに寄越しなさい! 下種はいらないから。まさか! 手をつけてなどいないわよね。そんなことしたら潰しますわ。何をポカンとしてるの。馬鹿面には喝をいれるわよ。聞いていますか? あのね――」
お盆は奪われて、正座させられて、さっきから早口で次から次へと。生で見るとすげえな。ついに上から罵倒し始めた。その後ろで昴が静かに笑ってる。
解放されたのは一時間後。最後にお茶は入れ直せと昴に怒られた。




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