[携帯モード] [URL送信]
小咄




「傘持っていなかったろ」


そう俺が苦笑まじりに言うのを昴は、黙って肯定した。雨はもう降っていない。止んでしまった後にこんなことを言って、実に滑稽だった。



***



急に雨が降り出したのは、昼すぎて暫くしてからだった。
確か、朝番組のお天気コーナーで外向きの笑みを誂えたお姉さんは今日は晴れって言っていたのに。
おかげさまで洗濯物が台なしだ。ひなたぼっこさせていたポチとタマ、そしてアーサーも撤収。突然落ちてきた、大粒の雫に彼らも彼らなりに驚いたようで―ポチとタマは甲羅に篭り、アーサーは自分の小屋に入ってしまった。
それらを手伝い、ふと考える。
そういえば昴に傘、持たせてなかったな。もう帰宅部はそろそろ帰る時間が近いな。
置き傘はないだろうか。いや、彼女のことだ―身の回りのことなんてわかるわけがない。置き傘なんてものあったとしても気づかないだろう。その存在を。
この雨は止むだろうか。
狐の嫁入り、通り雨、であれば……いいな。多分、そんな感じの降り出し方だったし。
だけど、まあそうは思っても行かないといけないかなあ、もし風邪でもひかれた面倒だし。
そうぐだぐだ思っていたら後ろから背中を押された。はい、傘を持って駆け出した。
結果は、あれだ。



[BACK]





第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!