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四年の中にも穏健派又は四年の良心とも言われる人物がいる。
四年は組の椚屋稜和である。
片割れの綾時のような勝気な性格ではなく、常に笑っていて滅多な事でなければ怒ることはないらしい。
又保健委員会に所属しており善法寺の補佐的な役割もしている。


*****


「あ、タカ丸さん」


ポツリと呟けば辺りがもう薄暗くなっている時間帯だが忍者と思えないほどの明るい金色の髪を少し崩して彼は彼特有の笑顔を稜和に向けた。


「ん…?稜和ちゃんかぁ〜、稜和ちゃんも結構酷いけど自主練?」



斉藤の言う通り稜和の服装はボロボロであった。
髪は乱れて紐は役目を果たせずにただ付いている様だし、制服はあっちこっち破れていた。
幸い大きな傷は見当たらないがかすり傷などは見受けられた。
稜和は自分の格好を上から下まで少し見て、頬を掻き苦笑いを漏らした。


「…急遽委員会があったんです」

「委員会かぁ…大変だったねぇ」

「はい、今日は薬草を調達しに行ったんですが落とし穴に落ちて薬籠を風に攫われ乱太郎と伏木蔵が迷子になり数馬が池に落ちそうになりそれを助けようとした左近が巻き込まれて一緒に転落してその間に伊作先輩はおそらく七松先輩が掘ったと思われる塹壕に落ちてみんなで引っ張り上げる事に成功したんですが今度は帰りに綾部の掘った自信作らしいとにかく深い蛸壺に私一人が落ちて助けてもらい医務室で少し休憩をとって帰ってきました」

「…お疲れ様」

「…はい」


暫くの間微妙な空気が二人の間には流れたが斉藤がその空気を破った。
稜和の髪に自分の指をもって行きワナワナと震えた。その瞳には怒りやら悲しみやら何とも表現できないような色が含まれていた。
稜和はしまったと心の中で後悔した。


「え、ちょ何これ…!?」

「……あは」

「あは、じゃないよ!!ちょっと稜和ちゃん!?どーゆー事!?何で髪が!!?」

「…枝に引っかかってしまい、中々解けなかったので…つい!」

「ついじゃない!!?もうっ!!綺麗な髪なのにぃ!」


恐る恐る稜和は斉藤を覗くように問うた。
それほど、今の斉藤は稜和にとって怖かったのだ。


「…あの、整えてくれませんか?」

「当たり前だよ!さ、お風呂行こ!!」


さっきの怖い斉藤は何処かに行き稜和は一安心し、今はぷんぷんと擬音が出るくらいにわかる表情に、全然年上っぽく見えないなぁと笑みを零せば早く早く!と急かされてまた稜和は笑ってしまった。


「後で滝夜叉丸のところで勉強教えてもらわないと…」

「そうだねぇ、僕もさっぱりなんだよぉ〜」

「でしょう?私なんてそろそろ進級がヤバイって言われちゃいました」

「えぇええ!?」

「授業が分からないので寝てたのが悪かったみたいです…」

「寝ちゃったんだ?」

「はい、ぐっすりですよ!」


暗い道を二人で在り来たりな事を喋りながら帰っていく。
ふと、稜和は斉藤の掌を見た。
それは華奢だけれども自分のそれよりも大きかった。まだ、火器を扱っているような肉刺や戦輪を扱うような肉刺や鍬を扱うよな肉刺など見受けられずその掌にあるのは長年鋏を扱っている肉刺だった。
稜和はその掌に自分のそれを重ねたが斉藤は別段驚くこともなくふわり、と嬉しそうに笑った。


「タカ丸さん」

「なぁに?」

「…今日は、一緒に寝ませんかー?」

「うん、髪梳せてねー」

「はーい」


その後二人仲良く蛸壺に落ちて綾時達が捜索し、見つけた頃には眠っていたらしい。
二人の寝顔は綾時曰く「馬鹿みたいに幸せそうに眠りやがって…」だったらしい。


まだ、光を望むことは許されるのでしょうか?
(最後の蛸壺は威力ありすぎ…!)


椚屋 稜和 三男

形すら残らないほどに切り刻んで差し上げます




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あきゅろす。
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