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べちょ


唆音は身体に何か冷たいものを感じてゆるゆると瞼を開けた。
視界に映ったのは久々知だった。
瞳はぎらぎらとしたものがあり唆音は背筋に冷や汗が通るのを感じた。


「へ…すけ…?」


起きたばかりで声は掠れてしまいまるで威厳がなく間抜けと言ってしまえばそれまでだった。


「…ああ。唆音先輩起きたんですね」


平坦で抑揚のない声があたりに重く響いた。
そして右手に持っていた豆腐を唆音に投げつけた。
それは唆音の顔にぶつかればぐちゃ、と嫌な音をたてていとも簡単に潰れた。
唆音は避けることも動くことさえ出来ずに豆腐を真っ正面で受け止めた。

それに久々知は口元に歪な笑みを浮かべて唆音へ近づいた。


「唆音先輩」
「へい、すけ…」


まるで子犬が母犬にすり寄る仕草で久々知は唆音の側に寄るのだ。
唆音は只名前を呼ぶしか出来ずにいた。


「唆音先輩は豆腐が似合うってずぅっと思ってたんです」


頬を赤くしながら耳元でまるで少女が告白するように久々知は唆音に囁いた。





「おいしそう」




「え」


久々知は迷うことなく唆音の首筋に口を寄せた。
舌で喉仏をゆっくりと舐め回し鎖骨に付着した豆腐を食べる。


「っ、…兵助!や、め…」

「ん…」

聞こえていないかのように久々知は舐めるのを止めようとはしなかった。
そして顔についた豆腐を舐め睫毛を舌で形を確かめるようになぞり唆音の口端についた豆腐に吸い付いた。


「兵、」
「黙ってください」
「っ」


唇に歯を立てられ唆音の唇から紅い血が顎を伝い落ちる。
その様子に久々知はうっとりとした瞳で呟いた。


「唆音、先輩」



久々知は両掌を胸の前で合わせて唇を一回ぺろりとなめた。


「戴きます」



唆音先輩。






「うあああぁあああ!?」



見回せばダラダラに汗をかいている自分と隣で寝ている同室者だけで豆腐も久々知の影もない。
唆音は胸を撫で下ろす、だが今の夢は余りにも衝撃過ぎた。



「…ごめん、兵助」



夜が更ける頃に唆音の謝罪がぽつりと聞こえた。


夢の君は余りにも猟奇的過ぎた!
(唆音せんぱ)
(うびゃあああぁああぁあああ!!!!!!)






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