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偶には何処かへ行きたくなるものだたしか誰か言っていた気がする。


*****


ぶらぶらと暇なので散策をしていたら久方振りに暗くじめじめしている処へ来た。
普段の自分なら簡単に上れるはずなのに実習で足を捻ったのを忘れていたのだ。
赤く色づく空へ視線を向けて溜め息混じりに無駄だと思いつつ誰か来ないかと唸ってみる。
視界に写るは藤色の髪。
いつもの無表情が綾時に向けられた。


「だぁいせーぃこー」


抑揚のない声が穴に響いた。
ジロリと睨んでも綾部は関心を向けなかった。


「珍しい」

「実習で足捻ったんだよ」

「おやまぁ」


ん、と当たり前のように腕を指しのばせば躊躇なく引っ張り上げられた。


「お前穴を深く掘りすぎ」

「穴じゃないよ蛸壺のター子ちゃん」

「ター子ちゃん掘りすぎだから!」


未だに座り込んでいる綾時に綾部は目を向け背に負ぶった。
綾時は抵抗を見せずになされるがままになっていた。

「綾時」

「何?」

「痩せたね」

「そうか?自分じゃ分からん」

「うん痩せた。稜和も、痩せた」

「…うん」


当たり前のようにツカツカと歩き出す綾部になんともいえない感情が湧き上がるがそれは言わないでおくふと綾部と見れば頬に傷が付いていた。
腕にもさっき怪我をしていたような気がする。


「なぁ」

「何?」

「喜八郎も怪我してるんじゃないの?」

「うん」

「いいの?」

「別に綾時位なら軽いし」

「失礼だな」


二人が向かう先は砂糖菓子のように甘い綾時の片割れのいる医務室だった。
きっと片割れは酷く悲しそうな顔をした後にやんわり甘く叱りながら治療をしてその後は酷く甘やかされるのであろう本人は至って真面目に説教しているらしいのだが見目や性格の所為なのか中々伝わらなく片割れ目当てに保健室へ来るやからも少なくはないらしい。


「綾時」

「ん」

「稜和怒るね」

「あぁ確実に怒るな」


二人はくすくすと笑いながら
穴を後にして片割れがいる医務室へ向かっていく夕日が二人の影を伸ばすのであった。



(二人で怪我したから治療して)
(二人とも其処に正座しなさい!)
((はぁい))




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あきゅろす。
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