☆Sub☆
◇◆◇2◇◆◇
そこまで考えたとき、
「あ、イサミ見っけ!!」
と声がした。顔をあげると案の定、数メートル先からヤツが駆け足でやってきていた。
出たな、世界最終兵器!!そして引っ込め!!
あまりのショックに、口に出すのを忘れて呆然としてしまった。
あまつさえ、何を勘違いしたのかヤツ・塔矢瑛利(トウヤ エイト)は、
「イサミの通学路はってて良かった〜。すぐ帰っちゃうんだもん。さっきから何黙ってるの?もしかして、感激で声が出ないとか?」
なんて言い出した。しかしその中に、ひっかかる言葉があった。
「ちょっと待て。通学路は毎回変えてるぞ?どうやってここが分かった?」
そう、前回通学路で待ち伏せされてからは、毎回変えるようにしていた。
なのに何故...
「ああ、それはね?」
「早く言え。」
「愛の力だよ!!」
「消えろ。」
頭湧いてんのかコイツ。
「もしくは真面目に答えろ。そうすれば、あと数秒は近くにいても許してやる。」
「それってつまり、答えたらすぐにどっか行けってこと?」
「お前にしては察しがいいな...」
「まあいいけど...」
そう言うと、瑛利は接近してくるだけならまだしも、僕の腰に腕まで回してきた。
「何しやがる変態。」
「何って言われても...ねぇ?」
「何がねぇ、だ。」
はぁ
と、あからさまにため息をつきながらもなお、瑛利は僕の腰に腕を回したままだ。
僕は、その腕をのけようと躍起になる。
「ただ答えたんじゃ損じゃない?」
「損じゃない。」
そう言った僕の言葉を無視して、瑛利は続けた。
「せっかく近くにいてもいいって許可もらえたんだし、答える間だけでも君に触れてなくちゃ...」
言いながら、瑛利は僕の頬に触れてきた。そして顎をとり、僕の唇を親指の腹でなぞる。
伏せられた目元が色っぽい。
ゾクッと鳥肌が立った。
口づけられそうになる。とっさに、さっきの自分を振り払うように、思いきり瑛利に頭突きをかます。
頭突きは瑛利の顔面にクリーンヒットした。
おでこがジンジンする。きっと赤く、もしかしたら腫れあがっているかもしれない。
それほど容赦なくやった。
「っっっの変態!!」
「いっ痛ぅ〜。ホント容赦ないねぇ〜。一応この顔、商売道具なんだけど...」
「あ。」
すっかり忘れていた。
そういえば、コイツはモデルの仕事をしていたのだった。モデル名は 8(エイト)。まんまじゃねぇか!と突っ込んだ気がする...
大型病院の跡取り息子のくせに、家を継ぐ気はまったくないらしい。
さすがにモデルをしているだけあって、身長は180p をこしている。
僕より10pは高い。
そして容姿は全体的に整っている。
悔しいことに、初めて会ったとき見惚れてしまった。
生まれてこの方、兄と弟以外の人間を綺麗だなんて思ったことのない僕がだ。
コイツには内緒だが...
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