☆Sub☆
◇◆◇1◇◆◇
「ちょっと、そこのカッコいい君!!」
オレはたまたま目の前を通り過ぎたリュックサックを背負った男に声をかけた。
カッコいいかどうかなんて知らない。顔さえ見ていないのだから...
何せ今は客寄せの最中なのだ。今日きたバイトに、客を呼んでこいだなんて無茶を言う。
それはともかく...
カッコいいと言われれば、どんな男(ヤツ)だって悪い気はしないだろう。
案の定、その男は振り返った。
その瞬間、オレは
(やりぃ!!)
そう思った。
男は若く、青年といった感じだ。
チェックの上着に黒のふちぶとメガネ、それにリュックを背負った格好は、アキバ系オタクのようだ。
しかし、そんなことは問題ではなかった。
怪訝そうな顔こそしていたが、その容姿は充分綺麗と言えるレベルよりも上をいっていた。
男に興味なんてなかったオレさえもが意識してしまうほどに...
(カッコいいって言ったのはマズったかな〜)
どちらかと言われればカワイイ系に見える。
そう思った矢先、
「俺、俺のことカッコいいって言う人、信用してないんで。」
そう言って、スタスタ早歩きで人混みにまぎれていってしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
僕は今、ものすんごくイライラしている。
なぜなら今さっき、
『カッコいい』
と言われたからだ。
普通の人ならば嬉しいだろうが、僕は違う。
僕もほんの数年前までは嬉しかった。自分でも自分の顔が女顔だと自覚していたから。
その自覚する原因になったヤツと、『カッコいい』と言われて嬉しくなくなった原因になったヤツは同一人物だ。
あの変態。
いや、それだけじゃ足りないな...
確かにその言葉は明確にヤツを言い表わしているが、日頃の鬱憤はこんなものじゃ表しきれていない。
言い直すなら...
あの痴漢エロバカアホボケ年中常春頭変態野郎。
僕が今イライラしている原因もヤツにある。
今日、久しぶりに『カッコいい』と言われたことで、ヤツを思い出してしまったからだ。
正確には、最近僕の大切なたった1人のカワイイ弟にヤツが興味を持ちはじめたことを思い出してしまったからだ。
あんなにカワイイ弟だ。すぐに、手を出そうとするに違いない!!
それだけは、阻止しなければ...
となると、意識を弟から逸す必要がある。
有力な手段は、自分が囮になる方法だ。
しかし、それはあまりにもリスクが高すぎる。
なぜなら、ヤツはどうやら僕に好意を持っているらしいからだ。
つまり、
囮になる=興味を弟から僕に移す=色仕掛けも同然!
あの日頃の変態度がさらにアップする畏れがあるのだ。
今でも充分、世界最終兵器並なのに、これ以上変態度がアップしたら...
[次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!