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短めな御話




「あ!愛、幸、優衣じゃん!」


奏他は眼鏡に邪魔されてわからないようでわかる満面の笑顔を浮かべてチワワたちの所へ走った。

そして園児顔負けの幼い笑顔のまま朝のご挨拶。


「おはよ!」


少し乱れたヅラとずれた眼鏡の下からのぞくキレイな顔を向けられた親衛隊一同は顔を赤らめあわあわしている。

先程までは奏他の気を引きたいがために罵声を飛ばしていたのだろうが、仮にも生徒会信者が転校生と仲良くしても良いのだろうかとか思う。まぁ大丈夫だろうけど。
人の性格とか趣向とかの批判とか嫌悪とかはしたくないけど、いいね、顔だけで性格が変わる人たちはスキだよ。
友好的でなく悪い意味でだけど。


「お、おおおはようっ」

「気安く声かけないでよねっ、…そ、そそ奏他っ」


笑顔に戸惑って、でも挨拶は必死に返す子。
奏他を軽く睨みながらも、もじもじと恥ずかしげに名前を呼ぶ子。
もうひとりは羞恥からか顔を二人よりも真っ赤に染め、小声で「お、はよ…う」と返していた。


さっきまで彼を罵倒していたときの威勢はどこに、って感じだけどまぁそんなのどうでも良いかと亜里は聞き耳をたて様子を見る。


彼らが仲良くなったのは少し前。

彼ら親衛隊に呼び出され、裏庭で制裁を受けそうになったときに偶然変装がバレたのだと、後から奏他に聞かされた。

もちろん俺が聞きたいわけではないが奏他がぺちゃくちゃ勝手に話してくれたのだ。口が達者でもないからぐだぐだ続く奏他の話を長ーい間聞いてあげた僕に感謝してほしいところだよ。本当に。

その後、晴れて友達になって、制裁もするフリはするが本気じゃないからとかなんとか言われたらしい。
本人は親衛隊は悪い人もいるけど絶対にアイツらみたいな良い奴の方が多いはずだ!とかなんとか言って、だから俺は親衛隊と友達になる!目指せ友達100人!とか言ってたけどぶっちゃけ100人とか小学生かよ。とか思ってしまう辺り、亜里もそろそろ奏他のお守りに飽き飽きしてきたのだろう。


ついでに、奏他は自分が亜里に変装がバレたと言ったのには気づいていない。
が、亜里には変装に気づいてくれと言わんばかりの行動をしているため、あながち無自覚に言ったわけではないのかもしれないと、亜里はにらんでいる。


どっちにしても亜里は、全く興味がないし湧かない奏他の事なんぞどうでも良いことこの上無い。


「また親衛隊の仕事か?俺にならいくらでも罵声とかして良いからな!」


にこにことチワワたちに笑いかけている奏他。それに顔を赤らめて申し訳なさそうに頷くチワワたちは、とてもじゃないが先日奏他に向けて敵意剥き出しにしていた女モドキには見えない。

奏他はウザいが、あの顔を嫌うほどではないらしい。チワワたちにとって。



「…世の中、不平等だ…」


可愛くもカッコよくもない平凡な顔を歪め、世の中顔なのかなぁと黄昏る亜里だった。


そんな亜里を尻目に、奏他のあとを追ってきたクラスメートふたりが親衛隊と奏他の取り合いをしていたとかいないとか。





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*後退すんの?

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