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Mille-Couleur.
変わるニチジョウ。



…かわらない、毎日。


…かわらない、風景。


…こんな下落した、
かわらない、かわれない日常―――。

















「コイツをくれないか」





声が、した。


侮辱するでも、見下すでも、嫌悪するでも、無く。


今まで聞いた声の中で、一番。



あたたかな、こえ。



そんな筈はないのに、俺に向けられた声だと、何故か思った。


汚い髭面ヒゲヅラ店主の、見た目を裏切らないダミ声がなにかを言っている。


きっといままで好きに遊んできた玩具が無くなるのが複雑なのだろう。


この店にある数少ない商品たちは、表では売られていることとなってはいるが、実際は、違う。


「御託なんてどうでも良い。私がそれを欲しいと言っているのだ」


ダミ声がぐずぐずと売買を迷っているのが解ったのだろうか。今まであまり声を発しなかった男(多分)が強い言葉で髭面を威圧するのが解った。

どうして俺は、こんなに冷静なんだろうと思うけど、多分現実から逃げたいんじゃないのかな。


だって、周りの俺と同じ、又はもっと高価な商品たちが期待に声をあげている。


「僕を買って!絶対に後悔させないから!僕は一級品だよ!」


とか。


「僕なら何でもしてあげられるよ。モノも一級品だし、満足はしても不足することはないだろうよ」


など、ね。


俺のモノは三級にも満たない下級中の下級だし、今までされてきたこと、させられてきたこと、全てがすべて、満足してもらったことなんて皆無だ。


だから、さっき聞いたあたたかい声の矛先は、別のモノに対して、なのだろう。


そこまで考えて、不意に怠惰感が襲ってきた。


期待しても、しなくても、結果は同じ。


誰も俺なんかに目を止めないし、寧ろ理由無く毛嫌いされたり体の良いように利用されたことぐらいしかない。

期待なんて、無駄だ。


答えは決まっているのだから。


俺は期待して開きかけていた眼を、再びきつく閉ざした。


元来俺は起きているよりも寝る時間のが長い。

他の奴等は起きている奴等のが多いようだが。


肩をすぼめて、出来るだけ小さくなるように縮こまる。


もう、髭面ダミ声は勿論のこと、男の声も、聞きたくはなかった。


今までのように、信じても、突き落とされるだけだと、もう、わかっているから――…。




あのあたたかい声で俺を呼んでくれたらだなんて、自分の考えに軽く嘲笑を漏らす。




意識がなくなる直前、微かに光が見えた気がした。













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