日常は束の間に。
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いつもポーカーフェイスな閑柾が、今は少し赤くなっている気がする。
………もしかしなくても、照れてる?
『…お前は、自分に無頓着すぎるんだよ。ばか』
いってすぐに軽く小突かれる。
痛くはないけどつい、反射で手が額にいった。
軽く額を押さえつつ、考える。
……つまり。
俺が、自分に無頓着だから、その分閑柾が俺に気を掛けてくれている、…ということ…かな?
…………なんだか。
『……保護者、みたいだな』
『…は?』
思ったことをつい呟いてしまった。
呟きが聞こえたのだろう、閑柾は怪訝な顔でこちらを見てきた。
『いや、なんか閑柾は、俺の保護者以上に保護者だなぁ、と』
『…意味わかんね』
そっぽを向いて、突然すたすたと歩き出した閑柾の長いコンパスを慌てて追いかける。
雨は、さっきまでの激しさを忘れたかのように微かに、だけどいまだに降り続けていた。
『……ありがと、な』
『……ん』
ぼそっと、でもちゃんと返事は返してくれる閑柾。
なんだか、妙に無性に、
…うれしくて。
知らず、笑みがこぼれた。
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