BL小説。 ハカセ。 そういって、僕をたすけようとした母さんを、父さんはなぐってだまらせていたことも、おぼえている。 僕は母さんを助けようとしたけど、僕を買ったヒトが僕をムリヤリ車にのせてしまったから、どうしようもなくて。 ―――…そのまま、売られたんだ。 僕が連れてこられた場所は、歩こうとしない僕をムリヤリ引っ張っている男と、もうふたりいる男たちの話から考えて、 なにかのケンキュウジョだということがわかった。 男たちはぼくをケンキュウジョのなかにつれこむと、『ハカセ』とよばれた男に僕を引きわたし、 早々に帰っていった。 『ハカセ』は見た目からすると50歳くらいの、くたびれた白衣をきた、目のにごった人だったとおもう。 おもう、って言ったのは、僕がハカセの顔をちゃんと見れたのは、僕がはじめてハカセにあったときだけだからだ。 僕は、ハカセに… ―――…いや、 ハカセとそのジョシュ(助手)たちによって、 生きた人体実験台にされたんだ。 それからのきおくは、 定かじゃない。 ただ、 僕のからだを好きかってにさわられて、 僕がなにを言っても返事はなくて、 例え泣いていたって、 彼らは笑いながら僕に手をくだしたんだ。 何日か、何ヵ月か、何年か 時は、果てしなく長くかんじた。 一秒が一分………いや、 何時間にもおもえて 僕は、自分の意思をふうじられたからだを動かすことをあきらめて、 うつろな目で、 僕をいじる男たちを、 ぼんやりと見ていることしか、できなかったんだ。 ―――……そして、いつのまにか、 気付いたら、僕は、 ―――…猫、に…なっていた。 猫…といっても、ただ 人体に猫の耳と、 猫のしっぽをつけただけの、 ……猫に成れきれなかった、失敗作。 ―――…だから、だろうか 僕は、売られたとき同様、 男たちに、 ―――……かんたんにすてられてしまった。 でもいちおう、はいりょなのか、ひとりの男が、すてる時に毛布をかけてくれた。 それはもう、朽ちかけた布切れだったけど それが最後にかんじた、ヒトからのシンセツだったかもしれない。 ――――……そして今、僕は、暗い路地裏の闇に、身をかくしている。 . <<*#>> [戻る] |