広い世界の夢物語
7
絵本の最後、ノーランドが死ぬ間際に残したと言う黄金は海にしずんだという言葉に、アホ顔そえて描かれたそれは実際には涙を流した無念の死だったという。
「……ノーランドは、地殻変動による遺跡の海底沈没を主張したが、誰が聞いても、もはや苦し紛れの負け惜しみ。見物人が大笑いする中、ノーランドは殺された」
そんなことを淡々と話すクリケットに、ウソップが嬉々としてモンブラン家の汚名返上のため海底の遺跡を探しているのか、と訊ねた次の瞬間。
「バカ言うんじゃねェ!!」
クリケットは怒鳴ると同時に、ウソップを狙って銃を放つ。
銃弾が当たらなかったのは、本気で狙っていなかったからなのか、器用に避けたウソップが凄いのか。
「大昔の先祖がどんな正直者だろうが、どんな偉大な探検家だろうがおれに関係あるか!!そんなバカ野郎の血を引いてるってだけで、見ず知らずの他人から罵声をあびる子供の気持ちがお前らにわかるか!?おれはそうやって育ってきたんだ!!」
それは、ノーランドに対する憎しみなどではなく、世間に対する憎しみだった。
育ってきた環境こそ憎んではいても、ノーランド本人にはその憎しみは向けられていないように、マルロスには感じられた。
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