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広い世界の夢物語


マルロスが考えに浸っている間に、サンジに次いでゾロまで老人の調子に振り回され、結局は刀に手を掛ける程に憤る。
取り敢えず、老人がクロッカスと名の双子岬の灯台守だと言うことは判った。
一部余計な情報付きだが。

「ここがどこかだと?お前ら、よくも私のワンマンリゾートに入り込んでそんなデカい口がたたけるもんだな。ここがネズミの腹の中に見えるか!?」

やっぱりクジラの腹の中らしいけど、こんな光景を見たらそれすら信じられないのだが、そんなことを思いながらマルロスが空を見上げる。
見上げたマルロスが、あ、と小さく呟いたが、他のクルー達は気付かなかった。
よくよく見れば、奇妙な違和感を与えるその空は、胃壁に描かれたものだ。
しかも、空を辿って視線を巡らせていけば、何故か空に大きな鉄扉がある。

「出口ならあそこだ」

「出られんのかよっ!!」

「あぁ、出口だったのか」

納得して頷くマルロスは、騒ぐクルー達には然程注意を向けないが、耳だけはクロッカスに集中していた。
何者だろう、と思う。
クジラの腹に中に空を描いたことを、クロッカスは新聞を見ながら当たり前のように遊び心だと言い切った。

「てめェ一体何やってんだよここで!!」

「いいさ、関わるな。出口があるんだ、さっさと出よう」

怒鳴るウソップを宥め、ゾロがそう言った直後、突然大きな響きをさせて辺りが揺れる。
揺れる船の上で、バランスを保ちながら周囲を見回すが、何が変わったわけではない。
何事だと騒ぐクルーに対し、クロッカスは始めたか、と呟いて静かに立ち上がる。
微かに聞こえるクジラの吠える声に、マルロスは目を閉じて耳に意識を集中させるが、声が遠くてよく聞こえない。
このクジラは、たぶん人の言葉を理解するはず。
そう思ったマルロスが、クジラの言葉を聞き取ろうと試みたのだが、どうにも上手く聞き取れない。
アルダの動物は、大抵がエルフの言葉を理解していたし彼らの言葉をエルフが判っていたが、やはり世界が違うと動物達が使う言葉も違う。
はっきりとは聞き取れないが、クジラが何かを叫んでいることは判る。
考えるマルロスの視線の先で、クロッカスが突然の衝撃について話している。
曰く、このクジラがレッドラインに頭をぶつけ始めたらしく、ナミはそれを聞いて、クジラが苦しんでいることに気付く。
それを聞きウソップは、クロッカスが体の中からクジラを殺そうとしているのだと考え、サンジもゾロも同じように考えたらしい。
だけどマルロスは、吠えるクジラの微かな声にそうではないと思った。

「……誰かを呼んでる……?」

「何言ってんだ?良いから、マルロスも船漕ぐの手伝え」

「え?あ、あぁ」

サンジに腕を引っ張られ、船首甲板を駆け降りる。
大荒れの胃液の海に、オールを漕いでも出口になんて近づけないと気付いて、どうしたものか思案する。
でもまぁ、漕がなければ出口には辿り着けないのだから、考えるよりもまず漕がなければならない。


 

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あきゅろす。
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