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広い世界の夢物語


「花だ!!」

「花!?」

「……人ですよ」

マルロスが訂正して、ロープを握って姿を見せた人に視線を戻せば、老人は無言で大王イカを自分の島に引き上げる。
妙な緊張感が漂う中、老人はイカを引き上げた後、数瞬の間こちらを見つめた。
が、クルー達に特に何かを言うこともなく、新聞を広げる。

「なんか言えよてめェ!!」

憤り怒鳴るサンジにも、動じた様子もない。
むしろ、騒がしいとでも言いたげな眼差しを向けているが、口を開こうとはしない。

「や……戦るなら戦るぞ、コノ野郎、こっちには大砲があるんだ!!」

「………………やめておけ……死人が出るぞ」

先手必勝とばかりに、ウソップがわざと脅すように怒鳴ったと言うのに、老人は動揺した素振りもなく静かにそう答えた。

「……へェ、誰が死ぬって?」

「私だ」

「お前かよ!!」

動揺していないと言うよりは、老人に全く相手にされていないようだと、マルロスは他人事のように思う。
確かに、海賊と言うには恐ろしさに欠けるし人数も決して多くない船だし、サンジ達も本気で怒っているわけでもない。
ただ、把握出来ない状況に戸惑い、その戸惑いをぶつけるように憤っているだけなのだ。
あの老人は、こちらのそんな心情を判っているのではないだろうか、とマルロスは考える。
もちろん、わざとこちらを怒らせるような意図が含まれているかもしれないし、普通にこんな言い回しをする人物なのかもしれない。
考えれば考えただけ、結局は堂々巡りをするだけの思考に疲れて、マルロスは考えることを止める。


 

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あきゅろす。
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