広い世界の夢物語 腹の中で 「ナミさん、大丈夫ですか?」 「えぇ、ありがと………で、どう思う?」 揺れが収まり、波も静かになった海のようなそこに船は浮かんでいて、空は晴れているし目の前には家の建つ島がある。 サンジが言うように、クジラに飲み込まれたはずの自分達が見ている光景は、あまりに現実離れしている。 クジラの腹の中、とは到底思えない程平穏な風景に、マルロスも首を傾げる。 マルロスもこれまで何百年と生きてきたが、さすがに生きたまま何かに丸飲みされた経験はないし、その腹の中がこんな場所だとは考えたこともない。 夢のような光景に、クルーの誰もがこれが現実ではないと思いたかったが、突然現れた巨大なイカにナミとウソップが悲鳴を上げる。 「大王イカだ!!」 船を襲おうとしているイカに、サンジとゾロが迎え撃つように構えた瞬間、今度はそのイカを巨大な銛が貫いた。 「人は居るみてェだな」 「人だといいな」 警戒は緩めず、緊張した雰囲気が漂う甲板でマルロスは、イカを引き寄せるロープの先にある家を見つめる。 人の子よりもよく見える目は、暗い室内に居る人影をしっかりと捉えていた。 老齢の男性だと、人影から見て取ったマルロスは彼から敵意を感じなかったため、剣の柄に添えた手をゆっくりと離す。 「う、撃つか!!あの島、大砲でドカーンと…!!」 「待て!!誰か出てきた……!!」 戸口に浮かび上がった姿に、サンジが思わず叫ぶ。 [*前へ][次へ#] |