広い世界の夢物語
2
「………………この"神の島"がスカイピアに姿を見せたのは…おぬしらの知る通り、400年も昔の話だと聞く」
マルロスは昨夜のキャンプファイアーの時、サウスバードから似たようなことを聞いたのを思い出す。
「それまでの"スカイピア"はごく平和な空島だったそうだ。たまに"突き上げる海流"に乗ってやってくる青海のわずかな物資は、空の者にとってはとても珍しく、重宝される。空島にある"大地"は全て、そうやって偶然空にやってきたものだ。だが、"神の島"ほど大きな"大地"が空にやって来る事は、まずあり得ぬ。奇跡なのだ。空の者は当然それを天の与えた"聖地"だと崇め、喜んだ」
話を聞きながら、ナミは持ってきた薬と水をガン・フォールとマルロスの前に置き、傍らに腰を下ろす。
空に打ち上げられた"大地"には先住民がいて、"大地"をめぐる戦いが始まった。
それが"シャンディア"との戦いだと。
それを聞いて、ウソップ、サンジにナミは驚いている。
マルロスは、地上にあったジャヤに住んでいたのと同じサウスバードがここに生息していることから、薄々感づいてはいた。
「"空の者"が私欲の為に彼らの故郷を奪い取った…以来400年、シャンディアと空の者との戦いは未だ止まぬ。シャンディアはただ、故郷を取り戻そうとしているだけだ」
そう話すガン・フォールの瞳には、複雑な色が浮かんでいた。
ナミがちょっと切ないわね、と呟き、ウソップとサンジの2人はガン・フォールを指差して、おめェらが悪ィんじゃねェかよと怒鳴り、ピエールに噛みつかれている。
「――――――そうだな、おぬしらの………言う通りだ……」
小さくもはっきりとそう呟いたガン・フォールは、しんみりした空気を払拭するように薬に手を伸ばす。
マルロスも、同じように一息に薬を飲む。
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