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広い世界の夢物語
3(サンジ視点)

ぺたぺた、と足音を隠しもせずにマルロスの傍らに近付き、その足元に座り込む。
そのまま、マルロスの膝に頭を乗せる。

「…………どうした?眠れないのか?」

そっ、とマルロスの手が、優しくおれの頭を撫でる。
子供をあやすような、そんなひどく甘く優しい手付き。
何も言わず、ただ黙ったままその優しい手に甘えていたら、マルロスがまた歌い出した。
今度の歌は、おれの頭を撫でるマルロスの手付きと同じように、子守唄のように優しい歌。

「……〜♪〜〜♪〜」

月明かりに溶けるような、そんな優しい歌を聴きながら、ぼんやりとこの感情の始まりを思い出す。
気付いたのはあの時、ドラムでマルロスが撃たれた時だった。
あの時程、自分の短気を恨んだことはない。
あの時は、運が良かったから腕を掠めただけだったけど、それだけでは済まなかったかもしれない。
マルロスが倒れる一瞬、心臓を鷲掴みにされたような錯覚に、息が止まるかと思った。
あの瞬間、マルロスを失いたくないと思う自分に気付いて、その意味を悟った。
マルロスが好きだ。
そう理解してから、余計に自分のしたことを悔やんだ。
あの時、おれが短気を起こさなければ、カッとならなければ、マルロスが傷付くことはなかったはすだ、と。
だから、あの時からマルロスと真っ直ぐに向かい合うことが出来なくて、顔を合わせてもつい目を逸らしてしまう。

「……………サンジ?」

いつの間にか歌い終わっていたマルロスが、そっと小さな声でおれを呼んだ。
眠っていないと示すように、マルロスの膝に乗せた頭を少し押し付けてやれば、小さく笑う声が聞こえた。
あの時のことを、マルロスが気にしていないことは知っているけど、おれは気にしまくりだ。
おれのせいで怪我をさせた、その自責の念が今も胸にある。

「どうしたんだ?」

「…………別に」

「何もなくはないだろう?ここ最近、少し様子もおかしかったことだし」

避けてることを気付かれてたのには、あまり驚かなかった。
クルーの変化に目敏いマルロスのことだから、おれが無意識に避けようとしていることにだって気付いているだろうと、ある程度予想していた。
だからと言って、簡単に話せることじゃない。



 

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あきゅろす。
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