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広い世界の夢物語


気まずい沈黙の中、ゾロが問い掛ける。

「一体何者と戦ったんだ?刀傷だけじゃねェし」

「ほとんどはバルログだよ。多少はオークにやられたものもあるけど、ヤツらは大した敵ではないから」

「バルログ?オーク?」

聞き慣れない固有名詞に、聞いていた方は首を傾げる。
その反応に、マルロスはどう説明しようか迷いながら、ゆっくり口を開く。

「バルログは炎と闇の悪鬼で、炎の鞭や剣を武器に持ち歩いていた。元々は、暗黒の敵であるモルゴスの召し使いだったマイアールと呼ばれる精霊が、悪鬼に作りかえられたんだけど」

「強いのか?」

「かなりね。私とエクやグロール、親友と2人がかりで、やっと倒せるような存在だった。個人であれを倒せる者は、私は聞いたことがない」

圧倒的な強さを持つ化け物、そう呼ぶに相応しいとさえ思える程だった、とマルロスは呟く。
そんな相手を、2人がかりとはいえ倒せたと言うマルロスに、皆が驚く。
マルロスが戦っている姿は、まだ誰も見ていない。
クロコダイルと戦っていた時、ビビは反乱軍を止めようと必死だったし、船でゾロと稽古した時は手加減していた。
本気を出した時、どれだけ強いのだろうかとゾロは少しだけ気になったが、仲間内で本気の戦いをするわけにはいかないと言い聞かせる。

「じゃあオークは?」

「………オークは、かつては私達と同じエルフだったと聞く。月や太陽が昇るより遥か昔、モルゴスに捕らえられたエルフはおぞましい拷問にかけられ、歪められて忌まわしいオークに作りかえられ、そして無数に生み出された」

「強くはないのか?」

「バルログに比べれば、大した敵ではないよ。軍勢の多くを占める数の多さと、武器に塗られた毒が厄介なだけで個としては強くはない。向こうに居た頃、いくら斬り捨てたか判らないぐらいだ」

苦笑を浮かべるマルロスは、今ひとつその姿を想像出来ないと言うウソップ達にせがまれ、スケッチブックにバルログとオークの姿を描く。
あまり絵は得意じゃない、と言いながらもサラサラと動く鉛筆が描き出す、醜い化け物の姿。
10分程して、ラフ画が描き上がる。
それを受け取ったウソップは、チョッパーとそれを覗き込んで声を上げる。

「ぅわっ、恐っ!!」

「マルロス、こんなんと戦ったのか!?」

そこに描かれた醜い化け物の姿に、ナミやサンジ、ゾロにビビも驚く。
いくらグランドラインが広いとは言え、こんな化け物は存在しないだろうと、皆は胸の内で思う。

「この話はこのくらいでいい?今はまだ、あまり思い出したくないんだ」

「あ、あァ。聞いて悪かった」

珍しく自分から謝ったゾロに、マルロスは小さく笑う。
もう少し時間が経てば、話しておきたい、あの夜のことを。
そう考えながら、マルロスは短くなった髪を撫でる。
あの夜のことを話せれば、少しは炎に対する恐怖心が和らぐはずだ、とチョッパーも言っていたことだし。
だから、今はまだ傷に触れないで欲しいと、マルロスは密かに思った。



 

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あきゅろす。
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