広い世界の夢物語
食糧難
朝食の準備に起きたサンジは、冷蔵庫を開けて目を疑った。
「………あんにゃろう、また夜中に冷蔵庫漁りやがったな」
取り敢えず、残っていた物と加工前の保存食を使って手早く準備を整えると、サンジはキッチンの外に出る。
もう既にみんなが起きていて、それぞれに好きなことをして朝食を待っている。
「あらサンジ君、朝ご飯になるの?」
「あぁナミさん、申し訳ねェが少し待ってくれるかい?おい、ルフィ!!ちょっと来い!!」
甲板に大の字で寝ているゾロを跨いで、サンジは船首で海を眺めていたルフィを呼ぶ。
朝飯かっ、と喜んで飛んできたルフィは怒っているらしいサンジの様子に、タラリと冷や汗を流し始める。
「座れ」
サンジの指差す通り、素直に甲板に正座したルフィは冷や汗ダラダラで、目も泳いでいる。
「ちょーっと聞きてェことがあるんだが……」
「いやいや、もう、ほんと。なんも知らねェから、おれはっ」
白々しい口笛と共に、顔の前で手を振りながらサンジの目を見ようとしないルフィに、サンジは静かな怒りを堪える。
「しっかりアラバスタまで持つ様に、おれがちゃんと配分しといた9人分の食料が、夜中の内になぜ消えるんだ?」
紫煙を吐き出し、ルフィを見下ろすサンジ。
無言を貫くルフィに、サンジはしゃがんで顔を突き合わせるとルフィの顎を掴み、ぐらぐらと揺さぶる。
ムダな抵抗はよせ、とサンジが言っても、ルフィは頑なに口を閉ざす。
そんなルフィに、サンジは口調を変える。
「おい、口のまわりに何かついてんぞ」
「しまった!!食べ残し!?」
「おめェじゃねェかァ!!」
「ふべェ!!」
カマをかけられ、見事に乗ってしまったルフィはサンジに蹴り飛ばされる。
そんな2人を見ていたマルロスは、苦笑いを浮かべる。
今朝方、ダイニングから不寝番のルフィが姿を見せた理由は、冷蔵庫を漁っていたからか、と今更理解する。
声をかけた時は何でもない素振りだったのにと思いながら、気付けなかったことを反省する。
「ん……?そういえば、ルフィの他にも……」
ウソップとチョッパー、それからカルーが、満足げな表情のルフィに続いてキッチンの方から姿を見せたことをマルロスは思い出し、船縁へと視線を移す。
釣糸を垂らす3人の背中に、マルロスは違和感を覚える。
背後から見ても判る程、あからさまに口が動いているのだ。
「ん?」
「ああナミさん見ただろ、あんにゃろひどいんだ〜!!鍵付き冷蔵庫買ってくれよォ」
「そうね、考えとくわ。命にかかわるから……」
ナミも気付いたのだろう、不自然な3人の様子に。
ゆっくりと3人の背後に近付くと、ゴゴゴンと殴り付ける。
その様子に、マルロスは苦笑いを浮かべる。
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