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広い世界の夢物語


ナミの指示なしでは、夜の海を航海するのは危険だと判断し、船の錨を下ろして数時間後。
薄暗がりの中、船室に響く複数の大きないびきに目を覚ましたナミが、ゆっくりとベッドに身体を起こす。
辺りを見回せば、見張りだろうサンジ以外の全員がベッドの側の床に転がり、毛布一枚で眠っている。
その様子を見て、ナミは早く治さなくちゃと思いながら、もう一度ベッドに横たわる。

「……ナミさん?」

「………マルロス……」

ベッドの微かな軋みに目を覚ましたのか、それとも眠ってはいなかったのか判らないが、暗がりに浮かぶ黄金色がベッドの傍らに近付く。
額から落ちたタオルを拾い、側の洗面器に張った冷たい水に浸しながら、マルロスはナミに柔らかく笑いかける。
ひどく安心するその笑みに、ナミはゆっくり身体から力を抜くと、額に乗せられる冷たいタオルに息を吐く。

「喉、渇いてませんか?」

ベッドに凭れて眠るビビを起こさぬよう、マルロスが静かに問いかける。
頷いたナミに、マルロスは水差しから冷たい水をグラスに注いで、ベッドの側に戻る。
ナミの身体を支えながら、ゆっくりとグラスを傾けて飲ませてやりながら、マルロスは務めて明るい表情を保った。

「………賑やかね」

「皆、どうしてもここで眠ると言って聞かなくて……」

苦笑いを浮かべるマルロスに、ナミも同じように小さく笑ってみせると、暖かな布団に潜り込んだ。
仲間が心配してくれている、それが少しくすぐったくて、嬉しかった。

「……マルロスの手、冷たくて気持ち良いわね」

「そうですか?」

額にタオルを乗せ直し、子供をあやすように頬を撫でていたマルロスの手を、ナミはそっと捕まえた。
身体がそれだけ熱いのか、それともマルロスの体温が元々低い方なのか、少しひやりとした綺麗な手がひどく心地好かった。
握った手と、空いた手でゆっくりと頬を撫でる優しさに、少しずつ眠くなる。
もっとこの心地好さを感じていたい、と頭では思っていても、忍び寄る睡魔には勝てない。
静かに寝入ったナミに、マルロスは小さな笑みを浮かべると、しっかりと布団を掛け直す。
握られた手も、頬を撫でる手もそのままで。




 

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あきゅろす。
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