翼をください。
僕らの日常
「ねぇ、その日どっか行かない…?」
「そだね。丁度休日だし…。」
僕がそう言うと、彼女は嬉しそうにバックから何かを出してきた
「じゃあさ、これ行かない?」
彼女が見せてきたのは映画の無料チケットだった。
「うん、いいんじゃない?」
「ほんと?やった!実は見たいのがあったんだよねー」
「それ、どうしたの?」
僕はチケットを指差しながら聞いた
「ああ、コレはね、バイトの人にもらったんだぁ」
あれ、優希バイトなんてしてたっけ…?
でも、口下手な僕は そんな事でさえ聞けずにいた。
「でもやっぱやめよっかなって思ってるんだ」
「なんで?」
「んー、説明会だけ聞いたんだけどさ…何か怪しいし」
「怪しいって…?」
彼女は思い出してか笑い出した。
「だって“注射を一回打つだけであなたに翼が手に入ります”だなんて怪しすぎるでしょう?」
いや、説明会にもよく行ったな…。
「…注射、打ったの?」
「ううん。説明会聞いただけだから」
「そっか」
それを聞いて少しホッとしていた。
「でも、翼が欲しいって思ってるのは本当だよ」
「ああ…知ってる。」
知ってるからこそ、少し不安になってしまったのだ。
そんな僕の内心を見透かしたのか、彼女はクスリと笑った。
そして、翼をくださいを口ずさみはじめた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!