小説
正義のヒーロー! 16
そして今日も、僕は駄菓子屋の前で待つ。
少女はいつになったら来るのだろう…もしや、もう来た後だったのか……。
ポツポツと、雨も降ってきた。最初は小降りだったのに、今では大降りだ。
流石にもう来ないかな…。
いくら少女が僕の事を許してくれなくたって良い。ただ、一言だけ言いたい事があるんだ。
…寒いな……。
僕は思わずその場にうずくまる。どうか…どうか来てくれ!
どれくらい経ったのだろう。凄く長く感じたけど、実際はそんなに経っていなかったかもしれない。
急に雨が当たらなくなった。一瞬、雨があがったのかと思ったけど…目の前に人の気配を感じた。
まさか、あの少女が!?
僕はバッと顔を上げると、その人物は驚いた顔をしていた。
その人は…………
駄菓子屋のおばあさんだった。
「あんた…また来てたのかい?」
「…………はい。」
僕は立ち上がる。身長的に僕に傘を差し続けるのは辛いだろうに、ずっと僕が濡れないよう傘を差してくれた。
それだけでもう、胸が暖かくなった。
「どうしていつもこんな所に突っ立ってるんだい?」
「いえ、それは…」
「…もしかして、いつも一緒にいた女の子を待ってるんじゃ……。」
「!」
「………。」
「…友達、なんです。僕の…初めての。」
僕がそう言うと、おばあさんは悲しそうな顔をした。
「…お気の毒にねぇ…まだ小さいのに……。」
「…え?」
「アタシも先日聴いた話なんだけどねぇ…その……」
「な、何です…?」
「曲がり角の出会い頭に車と衝突して………亡くなったそうだよ。」
頭が真っ白になった。
少女が…何だって……?
「あっ、ちょっとアンタ…ッ!」
僕は走り出した。雨の中ひたすら…。
そして丘の上から町を見下ろす頃にはもう、雨が上がっていた。
「ぅっ…うわぁあああああああああああああああああっ!!!!」
悲痛な声は、誰に聞こえる訳もなく、ただ涙と共に風へと消えた。
そんな中、ここから見る景色は相変わらず綺麗だった …―――
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!