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小説
嘘つき彼氏。 10












…―――― それはいつもと変わらない、ある日の事だった






ダウトさんの居る病室に入るためドアノブに手を掛けようとすると、小さくだが中から声が聞こえてきた。




……看護師さんかな?





入るのを躊躇っていると、中の声をたまたま聞いてしまった。



「もう、来なくてもいいから」



……!


私は完全に止まってしまった。
まるで自分に言われているかのようなその言葉に、息が止まりそうになる




…と。
そんな内に、すぐに目の前の扉が開かれた。





―――ガラガラ




私は出てきたその人と、目が合う。


 

少し年のいった女性。
スーツ姿で、目はとても疲れきっている。


でも分かる。この人はとても美人だ。
そして…














ダウトさんに似ている。














女性は一瞬止まったものの、すぐにその場から立ち去った。




「…ゴリ子ちゃん…」



ダウトさんは罰が悪そうな顔をする。


私はとりあえずベッドに座るダウトさんの近くへ寄った。




「今のは…お母様?」


「……」


「久しぶりに会えたん…だよね?」



上手く言葉を紡げない。
ダウトさんも何も答えない。



“もう、来なくてもいいから”



いつもの様子からは決して想像出来ないダウトさんの冷たい声。




ねぇダウトさん、貴方は今、何を想っているの……?


 





思えば、この日から少しずつ様子が可笑しくなっていったのかも知れない…。



 

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あきゅろす。
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