小説 正義のヒーロー! 20 瞬間的に目を瞑るも、いつまで経っても僕に拳は当たらない。 「………?」 うっすらと目を開けてみると、そこにいた意外な人物に驚いた。 「お前、昔悪で強かったんじゃねぇのかよ…。」 僕の目の前に立って拳を受け止めている人物は…… 「っ……主将!?」 殴りかかった人物は身を引き様子を伺う。 「行ったよなぁ?面倒起こしたら退学にすっぞってよ。めんどくせぇな…やり返せよ男だろぉ?」 ため息混じりにそういう主将は、ダルそうに頭を掻いた。 「…無駄な暴力はしないって……大切な友人と約束したんだ。」 僕の言葉に驚いたように目を見開く。 「お前…そんないっぱい喋るんだなぁ!」 「!?;」 普段笑わない主将が、ニヤリと笑った。 そして集団へと向き直る。 「それじゃあ手は出せねぇハズだ。よし、俺が相手になってやるよガキ共!!」 「ぁあ?んだこのジジー!!」 「やっちまえっ!」 集団が一斉に主将に向かってくる。流石に無理だ! 主将の前に行こうとした僕に、主将は右手でそれを制する。 「いいかぁガキ共、俺の生徒に手ぇ出す奴ぁ許さねぇ!!!!」 ―――… 「…主将、強いんだ…。」 「俺も悪かったんだよこう見えて。あーあ、久しぶりに動いたら疲れた…。」 「……ありがとう。」 「あ?」 正直びっくりした。主将はもっと冷めた人間だと思ってたから…。 絡まれてる僕を見て助けに入るような人だとは……普段からは到底思えない。 「そうだ、お前退学な。」 「っ!!?;」 「と、言いたいとこだけど…それも何か面倒だから今日は見逃してやるよ。じゃ、俺ぁこっちだから。」 そう言うと曲がり角を曲がって歩いていく。 「あ、そうそう。」 ピタッと足を止めると、主将が振り向いて僕に指を指す。 「よく知らねぇが…“約束”は守れよ。」 「!」 「お前も結構熱い奴なんだな。」 それだけ言うと、また前を向き直り去って行った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |