小説
正義のﾋｰﾛｰ！ 12
―――――…
丘から見える景色は、相変わらず綺麗だ。
「…ってて。」
「…どうしてやり返さなかったの？」
「………。」
喧嘩で手を出さなかったのも、僕が負けたのも初めてだった。
「お兄ちゃん強いんだから、私のことなんて気にしないでよかったのに…。」
「うるさいな。良いだろう別に。」
「…でも、お兄ちゃん格好良かった。」
「はぁ？」
こんなにボコボコにされてどこが格好良いというのか…この少女はよく分からない。
「お兄ちゃんは、やっぱり正義のﾋｰﾛｰなのね！」
「！」
「私のこと、まもってくれたんでしょう？」
「……。」
そうか、この子の中で僕は、“正義のﾋｰﾛｰ”なんだ。
ただ人を傷付けるために暴力をふるう“血の鬼狼”ではない…人を助けるために力をつかう“正義のﾋｰﾛｰ”なんだ……。
「ありがとう、お兄ちゃん！」
「…僕は何もしなかっただけだよ。」
「…ごめんね。」
急にしおらしくなった少女に違和感を感じた。いつも元気で自分勝手なくせに。
「私がつかまったからいけないんだよね…お兄ちゃん、いたいでしょう？ごめんね…ごめんね……。」
「…………馬鹿じゃないの？」
「え？」
「僕は強いんだよ。こんなの痛いわけないじゃん。」
「ホントに？」
「当たり前じゃん。」
「そっか、ならよかったわ！でも…」
「何？まだ何かあるの？」
「あの人たちに…仕返しにいくの？」
「っ！」
おかしいかもしれないけど…考えてもいなかった。
あんな屈辱は久しぶりだった。腸が煮えくり返って仕方がなかったのに…。
「そんなの、どうでも良い。」
「そ、そっか！良かったわ。」
どうしたんだろう僕は…。まさかこの少女に変えられたわけじゃないよな。
「じゃ、私もう帰るね！ホントにホントにありがとう！！」
「ふんっ。早く行きなよ。」
「うん！また明日ねっ！」
「お………って、待て待て待て待て！;」
「だってお兄ちゃんにお礼しなきゃ！大丈夫、13時に駄菓子屋さんで待ってるから！！」
って、また勝手に決めるなよ！！！！;
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