小説
恋よ来い! 9
俺らが走ってきたのは、夕陽がかった校庭だった。
夕陽色に染められた髪を整えながら、彼女は振り向いた。
「大丈夫だった!?磯野!!」
『ああ…ありがとう。』
そう、俺を助けてくれたのは神だった。
正直、神で安心した。
『みんないきなりどうしたんだろうな!あんな冗談言うなんてさ…。』
「…冗談じゃ、ないよ。」
『…え?』
「みんなは冗談であんな事を言ってるんじゃない。本気なんだよ。」
なんか嬉しいけど喜べないぞ…。
『俺には…よく分かんないよ。恋とか、好きとか、そんなのとはずっと遠い存在で生きてきた…。分かんねぇよ!』
俺がそこまで言うと、神は俺に近づいた。
でも、触れる事はしない。それが神の優しさだ。
「でも、告白の答えは2つしかない。YesかNoだ。それをはっきり答えるのが告白された側の責任で、自分を好いてくれた相手への、一番の優しさなんじゃないの?」
『…。』
「関係を崩したくないなんて、告白した方だって思ってる。それでも勇気を出した。好きと伝えた。それから逃げるな!磯野は都合良く逃げたいだけだ。そんなの…一番辛い…。」
今にも泣きそうな顔をする神に、俺もつられて泣きそうになった。
『そう…だよな。俺、ちゃんとみんなに言うよ。ホントの気持ち…。』
「…うん、それが良い。」
『ありがとな!』
俺がそう言って笑うと、神も同じ笑顔を浮かべた。
夕陽のせいか、いつもより可愛いく見えた。
そして俺は背中を向けて歩き出す。
「磯野!」
――ドンッ
神はいきなり俺の背中へ抱きついてきた。
「磯野を惑わせる事言いたく無かったけど…私は磯野が好き!私はここで待ってるから…。ちゃんと答え、出してよね。」
それから景色がまた変わる。
今度は、俺はただ一人で学校の正門に立っていた。
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