小説 夢、到来! 10 ――ピンポーン… 何故だろう。凄く大きく響いているような気がする… 俺の心音が。 ガチャっと扉が開くと、いつも通りの…いや、少し不機嫌そうな中島が出てきた。 「あ、磯野…先に帰っちゃってごめんなぁ。あと俺、もう仮監督やめるわぁ。」 『……。』 「何か自分だけ張り切ってて馬鹿みたいだよねぇ。ごめんなぁ。」 『なんだ、お前も自分で言った事をやり遂げないんだな。』 「え?」 中島は確かに昨日言った。 “5日間仮監督をやる”と。 『お前が言った事を守れないでどうすんだ?仮にも監督なら、子供達の手本になれ!子供達を勝利へと導け!!お前の背中を追いかけさせろ!!!!』 「!」 『中島。お前、チームで野球した事ないだろ?』 「う…うん。ずっと一人でメニュー考えてやってきたよぉ。たまに磯野と一緒にとか…。」 『そうだ。その点においては、お前は子供達から学ばなくてはいけない事があるはずだ。』 「一体…?」 『“チームワーク”』 「あ…。」 逆に今まで一人で練習してこれたのは凄いっちゃ凄いよな。 なかなか真似できる事じゃねぇよ。 『野球はチームワーク…すなわち信頼関係が一番大事なんじゃないのか?お前は本当に…子供達を信頼していたか?』 「…。」 口ではなんとでも言える。 でもそこで素直に答えずにいるのは、ある意味中島の良いところでもあるよな! 『…お前らならもっと、ちゃんとしたチームワークを築けるようになるはずだ!!』 「磯野…。」 『頑張れよ、監督!』 そう言って中島の肩を叩くと、中島は照れたように笑って「ありがとう」と言った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |