エロスが降臨しない件
ろくなことしない
ケセドニアの遠征に行って帰って来てみれば、マルクトは仮装だらけだった。
それはもう、魔女っ子やら吸血鬼やら黒猫やら、色々。
(そう言えば…、今日はハロウィンと言うやつでしたかね)
この時期になると、アニスとイオン様が仮装をして籠を持って来ていましたねぇ。宮殿に帰ったらきっと面倒だろうから、と菓子を買って行くことにした。
「ジェイド・カーティス大佐、只今帰還致しました」
「おージェイド!よく帰ったなぁ!!」
「私的には帰って来る日にちを間違えたかと」
宮殿に着けば思った通り大変な有り様だった。陛下の側近までもが仮装をしていた。多分……陛下の無理矢理だろう。
面倒事になる前に陛下に報告を済ませるとすぐに謁見の間から立ち去った。
(ん?足がなんか重いですねぇ)
「カーティス大佐ぁ…。助けて下さいよぉ」
「あれれぇ?こんな所にわんこが」
私の足元にはわんこ、もといフリングス将軍が涙目で訴えている。今日はリアルな犬耳つきで。
「皇帝陛下勅令ですよ!?拒否権ないんですよ!?」
「そんなに力を入れて言わなくても予想はついていましたから…」
「ジェイドぉぉお!!」
「おりゃ」
「がはっ!」
泣きわめいているフリングス将軍に抱き付かれていると前方から聞き慣れた煩わしい声がした。こちらも鼻水を垂らしながら抱き付いて来ようとしたので顔面パンチ。
「なんで!私も仮装させられなきゃならないんですか!!捕虜の私がッ!」
「それはサフィールだからですよぉ」
「理由になってないですよ!」
サフィールにはウサ耳が。似合い過ぎて腹筋が痛いですから、眼中に入らないでもらえますか。
「ジェイドー!Trick or Treat!!」
「これでも食ってなさい」
遠くから猛スピードでこっちに来る人間は見間違える事もない陛下だったので、開いた口にお菓子をねじ込んでやりましたよはっはっは。
「悪戯出来ないでしょ〜。残念でしたねぇ陛下?」
「やふなおふひ(やるなおぬし)」
「食べてから言いなさい」
わんことウサギは私の背中で小さくなっている。そんなに陛下が怖いんですか。
「ちっくしょー!覚えてろよバーカ!!」
泣きながらのそのセリフは完璧に悪役のセリフですよ!
「Trick or Treat」
「へ?」
「だ・か・ら、Trick or Treat。お菓子下さい?」
そう言うと陛下は真っ青な顔をしていた。自分は言い回って用意をしていなかったのか。
「ああ…、あれだよ。そのー…、みんなに、あげちまったんだよ」
「今手持ちに無いのと一緒ですよねぇ?お菓子が無いなら……、悪戯しないと、ねぇ?」
「ひっ……!く、来るなッ!!ぎゃぃゃぁぁぁああああ!!」
これで懲りてくれればいいんですけどね。この陛下の断末魔を聞いた城の皆さんは、心底安心したとか。
翌朝。
「………」
あれ?おかしいな。耳が頭の上にありますねぇ。しかも長いですね。なんですかこれは何がしたいんですか?ん?
「こぉんの……、くされ皇帝がぁぁぁああああ!!」
翌朝起きて鏡を覗くとウサ耳がついていたと言うのは内緒じゃない。はぁ……、その日から私はウサ耳で過ごすハメになってしまいました。
陛下は後程殺しましょう☆
皇帝陛下の本気
(いい迷惑だ)
fin.
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