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Dream1
Act.2 あれから3年


沢田葵として転生してから早くも3年の歳月が過ぎようとしていた。



彼女は赤ん坊の頃から周囲の情報をなるべく聞き落とさずに貪欲に勉強してきた。その為、年相応ではないを通り越した異端児だった。

幸いに彼女の両親は大らかなのか大雑把かわからないが厭わずに受け止めてくれていた。
母親はいつでもニコニコして、父親は「流石俺の娘だ」と笑って頭をガシガシと撫でた。トータルして20を超える葵にとって気恥ずかしい行為だったが、とても居心地が良かった。


しかし、世間はそうはいかなかった。

近隣の住民は彼女の振る舞いを【異端】とし、畏れた。
葵は記憶があるなどということは誰にも話すつもりはないが、特別幼児らしく振る舞うのはプライドが許さなかった。



「いったところでだれもしんじるわけないしね」


少々舌っ足らずな言い方になるのは3歳児の悲しいところだ。




「あおいちゃ〜ん!ツッくんを連れてきてくれない?」


ダイニングから母親の声が聞こえ、葵は隣で玩具をいじっている2歳の弟――綱吉に目をやった。

自分と同じキャラメル色の髪に自分よりも優しげな瞳の弟は、いつも目をかけていないとすぐに何かやらかして大泣きする。それでも2年も経てば、いくら面倒くさがりの彼女でもほだされるというものだ。

実際、好きな本(決して絵本などというものではない)を読んでいても彼が泣いていれば、ため息を吐きながらも本を置いて慰めに行くのだ。


「つなよし、おかあさんがよんでるからいこ」

「う?まま…?」


いまだに足元がおぼつかない綱吉は姉に掴まって立ち上がる。


「うん、きっとおやつだよ」

「おやちゅ……!」


パアアッと顔を輝かせ、彼は姉を急かすように腕を引く。
その様子に葵は顔をほころばせた。











ダイニングに着くと、いい匂いの元を持った母親――奈々が笑顔で二人を迎えた。


「二人とも今日はホットケーキよ。先に手を洗っていらっしゃい」

「はーい」

「わかった。つなよし、せんめんじょにいこう」


葵が先導するように手を引くと、綱吉はご機嫌の様子でついて来る。仲の良さげな二人を見て、奈々は微笑んだ。














ホットケーキを食べ終えた頃、奈々は葵にある話を持ち出した。


「ねぇあおいちゃん、並盛幼稚園に通ってみない?」


横目でまだ食べ終わってない弟を気にしていた葵が「え?」と小さく声上げた。


「なみもりようちえん…」

「ええ、いつもツッくんのお世話をしてばかりだから同い年のお友達がいないでしょ?だから並盛幼稚園でお友達を作ってみたらどうかしら」


葵は悩んだ。
確かに同年代の友人はいないが、中身が大人である彼女は会話が同じレベルではない者を相手にしてもイライラするだけだ。それにまだ小さな弟を放っておくことは、愛着が湧いた今では出来ない。


「ツッくんの入学は来年だからねぇ…」


「(先に入っておいた方が色々準備できるか…)わかった。かようよ。いつからなの?」


何かよからぬことを考える葵だった。


「よかったわ〜もう入園手続きしてきちゃったのよね。明日から通うのよ」

「あしたぁ!!!?」



初耳である。







こうして葵の幼稚園児としての生活が始まるのであった。




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あきゅろす。
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