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短編夢
結局、答えは決まっていたのかもしれない(火神生誕記念/男主/受主)
「遊羽先輩ーっ!」

『何だー?』

良くわからんヤツに気に入られた。

帰りに食べきれずに持ち帰ろうとした焼きそばパンを1つ差し入れただけなのに。

お腹減ったような顔をしていたから。

「あのなっ!あのなっ!・・・です!」

名前は、火神大我。

『・・・お前、犬みたいだな。』

その瞬間、火神がサーッと顔が青くなるのを見た。

どうやら、犬が苦手らしい。

比喩表現に使われるのも駄目なのか。

『そんな逞しい体してんのに、可愛いな。』

「かっ!わいくねぇ、です!」

そんな感じで毎日お昼休みとかに彼は先輩である俺のクラスに来る。

最初は不思議な顔をしていたクラスメイトもすでに日常茶飯事だと思い、気にもとめていない。

『火神、お前ちゃんと友達はいるよな?いじめられてこっちに来てる訳じゃ』

「ねぇです。遊羽先輩に会いたくて来てるだけだし、ちゃんと友達もいるっす。」

まあその図体なら大抵の人間はそんな考えも浮かばないだろうけど。

『ならいい。友達は大事にな。』

「火神も毎日来て楽しそうだし、よろしく頼むよ。藍沢。」

『伊月、そんな母親みたいなこと言ってないで混ざれよ。』

お前んとこの後輩なんだから、面倒見ろよ。

「伊月先輩は部活で会えるんで。」

『失礼な後輩だな。』

「全くだ。」

まあ、仲が良いから言えるんだろうけど。

「あの、遊羽先輩!明日俺んち来ないか!です!」

『いかねぇよ。』

即答したら、物凄く落ち込んでしまった。

『悪い。行くよ、火神料理上手いんだろ?何か作ってくれ。』

「う、うっす!腕によりをかけて作るっす!」

『そんな気張らなくていいからな?』

こいつは一体何に一生懸命になっているのだろうか。

まあ、可愛い後輩ってことにしておく。



そして、今。

『お邪魔します。』

「どうぞ。・・・・・・私服、ですね。」

『わざわざ休みに制服で来ないぞ。フェチなのか。』

「ち、違うっす。」

顔を真っ赤にさせる辺り、初々しいというか。

もっと色々汚いかと思ったが、意外と綺麗だし。

『あんまり、物ないけど一人暮らしか?』

「あー、本当は親父来る予定だったんすけど、仕事の関係で来れなかったんで一人暮らしっす。」

『高一で一人暮らしか、大変なのに偉いな。』

「そんなことない、です、けど。」

でもそう答える火神の横顔は、少し嬉しそうに見えた。

「遊羽先輩の口に合うかわからないっすけど。」

『おお!美味しそう。頂きます。』

ふっくらとしたオムライスに、コンソメスープ、サラダ。

意外に可愛らしいものを出されて驚いたのは秘密だ。

『ご馳走様でした。』

「美味しかったすか?」

『もちろん。火神はいい嫁さんになるよ、なーんて、』



ビビった。



火神超真顔。



『悪い、冗談だから怒るなよ。』

「・・・俺が嫁になったら、旦那になってくれるか、です、」

『え!?』

「・・・気持ち悪いっすか。」

『い、いや、えーと・・・なんとなく火神の気持ちは、わかってた。』

ただ、それに応えてしまうのはいけないと思っていたから、いい先輩でいようと思った。

「遊羽先輩、好き、です。」

真っ直ぐ過ぎる火神に、少し揺らいだ。

『・・・男同士の恋愛は、あまり周囲に快くは思われない。』

「・・・うす。」

『火神は、大丈夫なのか?』

「俺はそんなの気にしない。遊羽先輩が、嫌ならもう、そういうことはしない、っす。嫌いになれと言われても無理だけど、極力近づかないっす。」

どういうつもりで、俺を呼んだんだろうと思っていた。

多分、今日これを伝える為だったんだろう。

『ずるい質問して悪かった。俺はお前のこと可愛い後輩だと思ってる。』

「・・・脈ナシか。」

ずどんと肩を落とす火神。

『最後まで聞け。だけど、お前の気持ちは嬉しいと思ってる。多分火神に惹かれてると思う。』

「え?」

『だから、・・・もっと好きだって伝えてくれ。』

ゴメン伊月、お前の後輩を少し変な方向に導いたかもしれない。

「は、はい!」

ガバッと俺に覆い被さってきた火神。

『お、おい!誰がいきなり襲えって言った!』

「・・・え、違うんすか?」

『・・・違うからな。』

俺の伝え方が足りなかったのか。

火神の理解力がないのか。

とりあえずいそいそと、2人で正座し始めたのだが。

火神が俺に対しムラムラしているのが見てとれるし。

とても言い様のない空気が流れているのだ。

さて、どうしよう。



問題は俺もその気になってしまったことだ。



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