短編夢
守りたい人が出来ました(紫原/女主)
小さい女子と隣の席になった。
まあ、俺からしたら、ほぼ全部の女子は小さいけど。
群を抜いて小さいのが藍沢遊羽。
『紫原くん、よろしくね。』
鼻歌を歌いながら次の授業の準備をしている。
「よろしくー。それにしても、ほんとちっちゃー。」
自分の手を藍沢さんの頭に乗せたら頭も小さい。
壊れそう。
『紫原くんは、手がおっきくて、温かいね。』
こっちを向いてにこにこ笑う藍沢さん。
小さいのを気にしていないのかな。
「まぁね〜。」
何故か褒められた気がして、俺は上機嫌になった。
昼食を赤ちん達と食べた後すぐに別れることにして、教室に寝にきた。
藍沢さんも丁度友達と食べてたところみたいだった。
だけど、2人の友達は食べ終わってすぐ教室を出てしまった。
「ギリギリまで話さなくて良かったの?」
席に座ってから問いかけてみた。
『2人とも彼氏さんがいるからね〜。私はお菓子でも貪り食べてます。』
お菓子、その単語に反応してしまう。
「・・・それは、幻のまいう棒・・・エビアボカド味!」
俺がどんなに探しても見つからなかったのに!
『え?・・・ああ、お父さんの知り合いの人がこの製造会社の人でたまに送ってくるの。自分は食べないからって。・・・いる?』
「え!!いいの!?」
あまりの嬉しい提案に俺は飛び付いた。
『まいう棒くんも紫原くんに食べて貰った方が多分幸せだよ。』
はい、と手渡して貰う時に見た藍沢さんの手は、小さくてふにふにと柔らかそうだった。
「ありがとう、藍沢ちん。」
『え?』
きょとんとした顔をされた。
「仲良くなったら、あだ名で呼ぶんだ〜。だめ?」
『ふふ、いいよ。』
不快な思いをさせたかな、と思ったけど杞憂だったみたい。
それ以来、お昼休みの途中から合流してお菓子を広げる会ができた。
「藍沢ちんて何cm?」
『えー・・・140cmだけどー。』
目を泳がせる藍沢ちん。
「嘘だー、138cmくらいでしょ?」
『ぎっくぅぅ!』
口でバレた!みたいな擬音を言う藍沢ちん、本当小動物みたいで可愛い。
大切にしたいな、って思う。
「紫原くん、口にお菓子ついてる。」
女の子らしい柔らかそうなハンカチを取り出して俺の口を拭う。
何か、ドキドキした。
俺は藍沢ちんを持ち上げて膝の上に座らせた。
『え、と・・・降ろして下さい。重いでしょ?』
「全然重くないからやだ。」
重いどころか、綿菓子のように軽くて。
壊しちゃいそうで怖いけど触れていたかったから、抱きしめた。
「・・・あれ、紫原に藍沢。」
物珍しそうな表情をした赤ちんが現れた。
『あ、赤司くんんん!!助けて!』
手を伸ばし、赤ちんに助けを求めていた。
「あー、赤ちん・・・藍沢ちんと知り合いなの?」
「去年同じクラスでね。で、この状況は?」
「藍沢ちんが可愛いから膝抱っこしてる。」
『恥ずかしいからやめてぇぇ!』
腰辺りを抱いているから逃げようにもうまくいかないらしい。
「紫原。可哀想だからやめろ。」
「・・・・・・はぁ〜い。」
流石に赤ちんに反抗すると後が怖いから、降ろした。
『紫原くんの意地悪っ・・・』
ヤ バ い 可 愛 す ぎ。
そんな上目遣いで狙ってるんじゃないかと思う。
「・・・今日の部活は中止だ、と伝えにきた。」
「あー、ありがと赤ちん!」
やった。
「藍沢、頑張れよ。」
『・・・はい・・・?』
「癒される2人組だな。」
赤ちんは少し呆れた顔をしながらも、優しい表情を浮かべていた。
「ねー、後で一緒に帰ろ?」
『う、うん。』
さっき無理矢理膝に乗せたからか、警戒されてる気がした。失敗。
そして放課後になった。
「今日はいきなりごめんね。」
『ちょっとびっくりしたよ。』
困ったように、笑うから。
「遊羽、ちん・・・好き。」
『・・・え?』
「遊羽ちんが、好き。付き合って下さい。」
心地いい空間を共有できる友達だと思ってた。
だけど今日膝に乗せただけで真っ赤になって慌てる遊羽ちんを見てたら、愛しくて。
触れていたくなった。
「嫌だった?」
『・・・それを聞くのはズルい。・・・私、小さいよ?』
「可愛いじゃん。」
『キスとか、しにくいし。』
「俺が屈むし。」
俺は遊羽ちんの目線に合わせるように屈んだ。
次の瞬間俺の唇に、ふに、と柔らかいものが当たった。
『よろしく・・・敦、くん。』
照れたように笑っていた。
ああ、もうどれだけ可愛いのだろうか。
『敦くん顔赤いね。』
「遊羽ちんもね。」
2人でへらりと笑ってもう一回キスした。
後日、赤ちんに付き合ったことを伝えたら何か嬉しそうだった。
初デートに着いてくとかいうから、うぜーし、と答えたらしょんぼりしてた。
今度遊羽ちんと一緒にお昼くらいは食べてあげよう。
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