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短編夢
それが自然なこととなる(青峰生誕記念/男主)
昔はとてもバスケが大好きで。バスケが大して出来ない俺を誘ってくるくらいで。

『何でこんな捻くれてしまったんだ。』

「あ?」

俺は帝光でずっと3軍で練習していた。青峰は1軍で試合をしていた。

一度だって同じコートで仲間として戦えたことなんてなかったけど。それでも青峰が笑いながら楽しそうにバスケしているのを見るのが、応援するのが楽しかった。

だけどある日を境に青峰はバスケをつまらないと言い出した。練習にも出なくなった。

何でか問いただしても、これ以上練習したら上手くなっちまうからとかぬかす。

ふざけるなと、言いたかった。俺は、お前と同じ練習をしたって隣に立てなかった。だけど、そう言っていた時の青峰の顔は俺やその他の弱い人間を馬鹿にしているんじゃなくて、本人が一番傷付いたような顔をしていたから。何も言えなかった。

そしていつの間にか同じ桐皇に通っていた。


相変わらず、態度はそのままだったけどバスケ部に入っていた。俺も入ったけどもちろんスタメンになどなれなかった。

『前は可愛かったのにって話。』

「どこに可愛いヤツがいんだよ。」

キョロキョロと周りを見渡す青峰。

『お前だよお前。』

「俺が可愛いってお前、意味わかんねぇぞ。」

『同じ意見だ。』

「どっちだよ。」

こういう会話はしてくれるけど、バスケの話をすると途端に機嫌が悪くなるのであまりその話はしないようにしている。自分の無力さを呪いたい。

「青峰くん!ちゃんと部活出てよね!」

「あー?うっせぇな。」

桃井さんは凄いと思う。諦めたりせずに、ずっと青峰をバスケの練習に誘い続けている。

俺はずっと、青峰に嫌われるのが怖くて逃げ続けているというのに。



インターハイがあった。

「藍沢くん、お久しぶりです。」

『......黒子か。久しぶりだな。』

黒子が3軍にいた時に少し話した程度だったけど。青峰の相棒だった。羨ましい程、本当に息が合っていた。

「桐皇のバスケ部だったんですね。」

『んー、ああ。スタメンじゃなくて専ら応援組だけどな。黒子は凄いな、誠凛でもスタメンなのか。』

「僕が凄いわけじゃないですよ。」

帝光にいた時、青峰が変わって他のキセキの世代も変わって。黒子は目に見えて落ち込んでいった。

こんな戦い方を望んでいたんじゃない。そう叫んでいるように思った。いや、ちゃんと声に出していたんだ黒子は。

『黒子......俺がこんなこと言っちゃいけないと思う。だけど、青峰を救ってくれ。』

「そこで、はい、とすぐに答えられたらいいんですけど。......はい、頑張りますね。」

控えめな笑顔で黒子は応えてくれた。

『ゴメンな...』

「何で謝るんですか。」

そう言って黒子は誠凛の方に戻っていった。敵を応援するなんて、本当は駄目だ。

試合の間ずっと黒子は、諦めていなかった。だけどその日のインターハイは、俺達桐皇の圧勝だった。ああ、馬鹿なお願いなんてするんじゃなかった。



『青峰。』

「あ?何だよ。」

『......いや、何でもない。』

また言えなかった。バスケが大好きだったあの頃のお前に戻ってくれ、と。

「何で泣きそうな顔してんだよ。」

『何でお前は微妙に鋭いんだよ。』

どうせなら思いきり鈍いままでいてくれ。

「そりゃ分かるに決まってるだろ。もう何年の付き合いだと思ってんだよ。」

そこまで分かるんなら何で泣きそうなのかまで分かれ。

『知らん!...お疲れ様。』


スポーツドリンクを渡して労わっておく。


「......おう。」

ぶっきらぼうにそう答えてからドリンクを受けとっていたけど、勝ったというのに嬉しそうな顔をしていなかった。その理由は何となく分かってはいるけど。


でも俺はお前の気持ち分かるよ、なんて無責任な理解者のフリなんて出来ないから。


なんとなく隣を歩いたつもりで。傍にいるつもりで。それが一番青峰を傷つけているのかもしれない。



『......なあ、俺バスケ部にいない方がいいか。』

「は?」

インターハイは、海常と戦い勝ったけど、決勝で洛山と当たってまけた。まあ洛山戦は青峰は肘を痛めたから出なかったんだけど。

ウィンターカップが始まる前に、聞いてみた。

「別に、確かにお前は戦力にはならねぇけどな。」

ハッキリと言ってくれやがる。

「でもお前がいねぇと少しは寂しいかもな。」

『そのわりに部活出ないのはどこの誰だっつーの。』

「ああ?」

久しぶりに、バスケに関して言及したら、やっぱり凄く機嫌が悪くなった。

『俺はまた青峰とバスケしたいよ。』

「......藍沢とじゃ勝負にもなんねぇんだよ。」

『好きなだけじゃ、駄目なのか。』

ポツリと呟いてから、俺はその場を離れた。後ろから青峰が呼んでいたけど全部無視して家に帰りベッドに寝そべった。

『ああもハッキリと言われるとショックだな。』

弱いと言われるのは構わないけど、一緒にバスケすることすら拒否されると辛い。その日からほんの少しだけ距離を取るようにしてしまったし、青峰も多分距離を取っているように思えた。




そんなこんなを過ごしているうちにウィンターカップ。青峰の肘の故障も完治し、万全だ。桐皇が優勝するんだろうか。




『......頑張れ。』

「......おー。」

久しぶりに交わした会話だった。

そしてまた誠凛と戦うことになったけれど、正直この前あれだけ大差をつけて試合が終わったから、またそんな試合になるかと思っていた。


でも違った。黒子が、誠凛が勝った。


青峰は呆然としていた。でも最後に黒子と拳をぶつけていたから、大丈夫なんだろう。会話は良く聞こえなかったけど。


「藍沢。ちょっと来い。」

『え、あ、』

戻ってきた青峰に強引に引っ張られて行ってあまり人気のないところまで来た。

『どうしたんだ。』

「テツに、俺を救ってくれだのなんだの言ってくれたらしいな。」

『......黒子の奴。』

言うなよそういうことは。

「余計なお世話なんだよ!」

『知ってるけど!......心配位、させてくれよ。俺をバスケに誘った時のお前の笑顔がまた見たかったんだよ。』

ただのエゴだと知っている。笑顔が見たかったなんて俺のワガママ。

『もう目の前にいることすら、友達に戻ることも出来ない位青峰にとって邪魔な存在か、俺?』

もしそうなら、去ってしまった方が。

「違ぇ。」

予想外に早い返答に思わず顔をあげたら、何故かキスされた。

『......え?』

「好きなだけじゃ駄目か、って前呟いただろ。あれはバスケのことか?俺か?」

バスケすることを拒絶された時の話しか。


『あの時はバスケのことだったけど。』

地味に青峰がショックを受けたような顔をした。

『俺は、ずっとお前のことが好きだった。中1から、ずっと。』

「......は、ハハハ!」

人が真面目に告白しているのに失礼だな、と思ったら。

「お互い、随分長ぇ片想いだったな。」

それは、都合良くとらえていいのだろうか。

「ずっと何もいわずに隣にいたから当然だと思い上がってた、俺。」

『......まあ、好きでやってることだし、な。』

「遊羽。」

いきなり名前で呼ばれて心臓が跳ね上がった。

「今度一緒にバスケするか。」

顔をあげた時見た青峰の表情は、お前もバスケしねぇ?と誘ってきた、あの時の表情だった。

『おう、大輝。』




俺に出来たのは隣にいることくらいだった。それすら一時やめてしまったけれど。

これからは、ずっと隣を歩きたいと思う。

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