短編夢
好きだ、なんて(黄瀬/男主/受主)
凄く鬱陶しいヤツがいる。
『放せ。黒子に会いに来たんじゃないのかよ』
「遊羽っちに会いに来たんスよ〜」
この男、黄瀬涼太。
ちょっと前に、黒子と歩いてたら妙に突っかかってきたので、蹴飛ばして罵ったら懐かれた。
モデルをやってるらしいので雑誌を見てみたら、表情が違っていた。確かにかっこいい。
なのに、この現状はなんだ。
『黄瀬、お前かっこいいんだから、あまり残念な顔するな』
「わああ!かっこいいって言われたっス!!」
駄目だコイツ。だらしない顔しやがって。
『黒子助けてくれ...』
「黄瀬くんのことを頼みました」
あっさり切り捨てやがりましたよ黒子は。
絶対厄介なのいなくなったと思ってる。
元々黒子に凄く懐いてた黄瀬だが、最近は俺に引っ付いてくる。
『何なの、お前』
「好きなんスよー、遊羽っちが。海常に転校してきて欲しいっス!」
『嫌だよ。誠凛が好きなんだ。だったらお前が誠凛に来いよ』
「えっ...遊羽っちが言うなら...いや、バスケ部はどうなるんスか...」
ブツブツ呟きながら悩む黄瀬。
『悩むな。海常好きなんだろ?』
「...別に、高校なんてどこでも」
『嘘つけ。海常の話してる時が一番楽しそうだよ、お前は』
変なところで意地を張るなよ。
おい、黒子なんでそんな哀れみの目を向ける。
「あああ!やっぱり好きっスー!」
『ぎゃああ!抱きつくな気持ち悪い!重い!』
鼻息が首筋にかかって本気で気持ち悪い。
「黒子っち、遊羽っちお持ち帰りさせて貰うっス!」
俵担ぎで俺を持ち上げる黄瀬。
「お元気で。遊羽くん、腰をお大事に」
『何の心配してるんだよお前はぁぁぁ!!』
健全な男子高生にはどういう意味かわかったからな!
何、俺そういう運命なの?
ずんずんと人気のない方向に進んでいく。
『馬鹿、降ろせよ』
「...逃げないならいいっスよ」
さっきのテンションが嘘のように、ただ静かに。
まるで壊れ物のように優しく扱う。
「嘘じゃないっス...好き、っス」
『...どういう意味だ?』
「ちゃんと恋愛感情の意味っスよ」
わかってるくせに、と壁際に段々追いつめられていく。
「ねえ、俺は遊羽っちの気持ち知りたいっス。本当に嫌なら...やめるから」
『お、俺は...』
黄瀬はひょいと俺の顔を覗き込む。
「何で顔が真っ赤なんスか?」
『うるさいな..!』
俺は、お前のそういうところがキライだよ。
わかってる、くせに。
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