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短編夢
魅せられたのは俺の方(緑間生誕記念/男主)
電車が止まり、少し遅れてから学校に着いた。

「真ちゃーん!誕生日おめでとう!」

同じクラスの高尾が少しやかましいくらいに緑間の誕生日を祝っていた。

「うるさいのだよ。」

しかし、それを緑間は一刀両断していた。


「ひでーな!ラッキーアイテム見つからなかったからって。」

いつも緑間はおは朝の占いで出てくるラッキーアイテムを持って学校にくるんだけど、今日は見つからなかったらしい。

「同じクラス、同じ職場の男性が作った手作りアクセサリーって、ありそうでねぇじゃんな。」

「何故作って来なかったのだよ。」

「そんなもん俺作れねぇから!」

「人事を尽くすのだよ。」

「無茶言うなよ...って、藍沢だけまだ聞いてねぇや。無理だと思うけど、藍沢の手作りのアクセサリーって持ってない?」

既にクラスの男子全員に聞いたんだろうか。

「持ってるよ。」

「だよなー、やっぱねぇ、......持ってる!?」

『趣味なんだ。』

実は、シルバーアクセサリーを作るのが趣味でいつも何個かは持ち歩いている。

『緑間、いる?』

「......すまないが、貸してもらいたいのだよ。」

『今日は指輪しか持ってきてないけど、バスケするのに邪魔だよな。チェーン付けとくか?』

ネックレスにすればシャツに隠れるし、部活中でもまだそんなに違和感ないだろう。

「お願いする。」

『はい。』

「へー......藍沢すげぇ。プロみたいだな。」

高尾が指輪をまじまじと見ながら呟いた。

『いや、俺なんかまだまだだよ。』

「そんなことねぇよ。俺にも作って〜!」

「調子のいいこと言うんじゃないのだよ。」

高尾とそんなに話したことはないけど、いつも色んな人と仲良くしている。

正直、緑間と仲が良いっていうのは不思議な感じだ。

そんな感じで緑間に指輪を貸したのだが、何となく授業中見てると中々面白い。ことあるごとに、指輪を見ている。

そんなに見ても指輪は変化しないぞ、とからかいたい衝動にかられたが、真面目な緑間を茶化すのは何だか可哀想なのでやめた。


そうしたら、何故か高尾にお昼に誘われた。もちろん緑間も一緒に。

『二人ってなんだかんだ仲良いよなぁ。』

「そうそう。俺達親友だからさ!」

なっ、と無理矢理肩を組んでいた。

『高尾、ゴミムシを見るような目で緑間に見られてるけど平気か。』

「結構辛いかな...」

何か自転車にリアカーを付けた乗り物に乗ってたりするの見たことはあるけどあれは何の遊びなんだろうか。

「藍沢は...」

今まであまり会話に入らなかった緑間が、喋り出した。

「いつから、こういうものを作っているんだ。」

『んー...中学生に上がった頃、近所のお兄さんが作った指輪見て凄いってなって自分で作り始めたかな。最初は中々思ったように作れなくて大変だったけど、楽しくてずっと続けてる。』

普段人にそんな話をしないから少し照れたけど、緑間は真剣に俺の話を聞いていた。

「そうか。」

聞いておいて三文字の返事かよ、とも思ったけど。



「凄く、いいと、思うのだよ。」




まだ続きがあったみたいだ。

不器用そうな緑間がそう言っているということは、多分本心なんだろうと勝手に解釈した。

「珍しいじゃん人を褒めるなんて〜!」

高尾が茶化したことにより、緑間の機嫌は急降下したが。


『面白いな、二人とも。』


何だか面白くて、そんな二人の関係性を少し羨ましく思った。

「藍沢だってさっきのゴミムシ発言結構面白かったぜ?」

「的を射ていると思ったのだよ。」

「ひでぇ!やっぱゴミムシだって思ってんの真ちゃん!」

まあ、でもお前らの方が面白いと思う。

「藍沢、もし用事とかなかったら、今日の部活観にこねぇ?藍沢の指輪の効力見せてやるのだよ!なーんてな。」

「おい高尾!」

『じゃあ行ってみようかな。』

帰宅部なので特に用事とかはないし。緑間が凄いという噂は聞いたことがあるので、お誘いがあるのなら一回は観てみたい。

「......別に見てもそんな楽しいものではないのだよ。」

『分かってる分かってる。』

何となく少し掴めた。今のは少し照れているような気がする。

「真ちゃん照れてる〜!」

やっぱり照れてるんだ。

「ふざけるなよ高尾。」

まだ入学してから数ヶ月しか経ってないのに本当仲良いよな。いや、中学の時からの友達なんだろうか。



そんな感じで放課後観にいくことにした。

その後の授業もちらちら指輪を見ている緑間。見慣れないから気になるのか。




「じゃあ後でなー!」

「......待ってるのだよ。」

「デレたー!」

高尾は緑間に頭をはたかれていた。しかしあれがツンデレっていうものか。

そして体育館に着いたけど、どこから見ればいいのかな。



「おい。何やってんだ。」

『...は、えーと、あの...』

機嫌の悪そうな金髪の先輩がいる。怖い。


「宮地さん、俺達が連れてきたんです!真ちゃんのラッキーアイテムくれたんですよ!」


そんな言い訳先輩に通用するのだろうか。


「...ああ、そうなのか。悪かったな、まあ適当に見ていけよ。」

大目に見てくれるのか!緑間なんか凄いな。



『ありがとうございます。』

そう言ったら、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。

「緑間と高尾もそれくらい可愛げがありゃいいんだけどな。」

「どういう意味ですか!」

中々個性的な部活だというのは把握出来た。


体育館の横の上にある手すりがあるところから見ることにした。



『うへぇ...』


思わず瞬きをするのを忘れそうになる程に、速い動き。

あんなの絶対着いてこられない、なんて思っていたら、高尾から緑間にパスが渡った。

丁度コートの半分のラインの上にいた緑間がどんな風に動くのかと思ったら、緑間がそこから動くことはなくて。


『え、』


シュートをそこから打っていた。入るわけないと思ったけど、その放たれたボールはブレることなくゴールに吸い込まれていった。



瞬きどころか、息をするのを忘れてしまった。


緑間が凄いって噂は伊達じゃないんだな、と改めて思った。

それからもずっと見ていたら、一度ボールが飛んできた。

何とかキャッチして渡したら、緑間に手は大丈夫か、と言われた。指輪を作る俺の手を心配してくれたのか。



「やー、今日はあんがとなー。」

「何でお前が礼を言うのだよ。」

「真ちゃんが言いそうにないから。」

「ちゃんと言えるのだよ。藍沢、ありがとう。」

『お、おー。何か緑間に礼を言われると照れるなー。』

「どういう意味なのだよ。」

普段関わらない二人と関わって何だか不思議な一日だった。携帯のアドレスまで交換してしまって。

一日が終わってないのでそのまま指輪は預けた。

その日の夜、緑間からメールが来た。

絶対メール何か寄越さないと思っていたのでびっくりした。


【今日は助かった。そして相談がある。この指輪が気に入ってしまった。無理にとは言えないが買わせて貰いたいのだよ。】


あの指輪をちらちら見ていたのは気に入っていたからなのか。俺も自分が作った指輪がそこまで気に入って貰えて嬉しかった。


【今日緑間誕生日だったから、あげるよ。誕生日おめでとう。】

【知っているのか。】

【高尾が朝祝ってただろ。】

【そうか。ありがとう。】



短いメールだったけど、何か凄く嬉しくなって。幸せな気分で眠りについた。


「藍沢...お、おはよう、なのだよ。」


首元からちらりと見えるチェーン。本当に気に入ってくれたんだな。

『お、おはよう。』

でも何か、照れるなこれ。


「藍沢ー、真ちゃんてばこの指輪超気に入ってるんだぜー?」

「高尾!」

「俺にも作って欲しいのだよー!」

「駄目なのだよ!」

凄い剣幕で、緑間がそう言った。

緑間の扱いに慣れている筈の高尾も少しビックリしたみたいだ。



「......なんて言う権利、なかったのだよ。」


緑間は走り出して教室から出ていった。


『た、高尾!その話はまた後でな!』


「真ちゃんによろしくー。」


にへら、と今の状況を楽しむような笑顔。


時々緑間が高尾おぉ!っていう理由が分かったような気がした。


緑間は、屋上に上がっていく。


『緑間、わざわざ行き止まりのあるとこ逃げるなよ。』


相当テンパっている。

「さ、さっきの言葉は忘れろ。」

『嫌だ。昨日だって指輪そんなに気に入ってくれたの、嬉しかった。』

「う......」

勇気を出して、言ってくれたんだろう。

『さっき、指輪を作るのを止めたの、どっちに嫉妬したんだ?』

「......そういうのを聞くのは、反則なのだよ。」

『確かに緑間だけに聞くのはフェアじゃないな。』

緑間の気になったところとか、かっこよかったところとか、優しいと思ったところとか沢山言ってやろう。

そうしてから、また同じ質問をしてやる。


多分、応えてくれると信じている。

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あきゅろす。
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