短編夢
何だかんだ、終わったような物だ。(赤司/女主)
怖い。
何か赤司くんがこっち見てる気がする。
中2になり、クラス替えをした。
赤司くんと隣の席になってしまったのだが、それ以来何か見られてる、ような気がする。
何か怒らせるようなことをした覚えはない。
凡人中の凡人の私が、彼に何かしてしまったら、この中学校生活はもう終わったような物だ。
「藍沢」
『はひぃっ!?』
ついに話しかけられた。
「......驚かせて、すまない」
『あ、はは。すいませんでした、変な声出して』
赤司くんに謝られてしまった。
「同い年なのだから、敬語は必要ない」
『すい、......ゴメン、ね?』
怖い。
今眼を見開かれたし、タメ語で喋ることを強要されてしまった。
「うん。それでいい。今ちょっと時間貰ってもいいかい?」
私が頷いたら、今度は機嫌が良さそうに笑う。
怒ってはないのかな。
「君は覚えてるかな。俺が中1の時、たまたま外で転んでしまってね」
『赤司くんが転んだ!?』
「......覚えてないね」
ヒィ!笑顔だけど何か真っ黒なオーラを身に纏っている。
「正直恥ずかしくてね。さっさとその場から離れようと思ったら、女子生徒に話しかけられた。転んだの?と」
ん?何か、記憶があるような?
「俺はいいと言ったんだが、ばい菌が入ったらどうする、と半ば無理矢理保健室で治療させられた。...その顔は思い出したね?」
私は、何てことを。
『その節は、偉そうに申し訳ござ』
「敬語」
『偉そうにゴメン』
や、やっぱり怒ってるんだ。
「ああ、違うこんなことが言いたい訳じゃないんだ。お礼を言いたかったんだ」
『お、礼?』
「自分のくだらないプライドのせいで、怪我の治りを遅くし、人の厚意まで無下にする所だった」
赤司くんは、先ほどの怖い笑顔ではなく、優しい笑顔を浮かべた。
「だから、ありがとう」
『......うん』
思いの外、凄くいい人だった。
必要以上にビビってゴメンなさい。
「まあここまでは、本音だが、建前だ」
『ん?』
「それ以来君のことが気になっていた。そして、同じクラスになって確信した」
よくわからないけど、嫌な予感がする。
「遊羽、好きだ」
手を、握られる。
『え、な......ええぇぇ!!』
しかも今名前呼び捨て!?
「何をそんな驚いて」
『お、驚くよ!だってただ一回怪我治療しただけだし、私別に何の取り柄もないし、他にも美人で可愛い子いるじゃない!』
「俺の好きな子の悪口は言わないでもらえるか?」
『っ......』
赤司くんのたらし!
そんなこと言われたらもう何も言えない。
「ねえ、返事を聞かせてよ」
握られた手からじわりと熱が伝わり、離す気はないのだと気づいた。
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