短編夢
と、言わない俺は天邪鬼(高尾/男主/攻主)
※主人公攻め寄り
『たっかおー!』
「うわっ!」
飛びつかれてバランスを崩す。
同じクラスの藍沢遊羽は、何故か俺に執着してかまってくる。
「またお前らはじゃれあっているのか。」
ため息をつく真ちゃんに、俺は別に望んでないと伝えたかった。
『緑間は可愛くないから抱きついてやんねー。』
「安心しろ、一ミリも期待してないし、必要ないのだよ。」
『そりゃそーだな。』
勉強も運動も、そこそこ。加えてコミュニケーションスキルも高い。
こう言うのもあれだけど、自分がもう1人いるみたいなそんな感覚。
「高尾は、誰とでも仲良いが、藍沢にはあまり懐かないな。」
真ちゃんがそう言い放つ。
「当たり前だろ!だって、」
『はいはーい、高尾。ちょっとこっちー。』
口を押さえられ、ズルズルと人気のない、空き教室に連れてこられる。
わりと強く抵抗したけど、全くビクともしない藍沢は、相当力が強い。
『あんまりペラペラ喋るのは、良くないな。』
「離せよっ!」
『あんまりうるさいと、その口塞いじゃうよー?』
「な、んんっ!」
藍沢に懐く?そんなわけないだろ真ちゃん。
コイツはそういう意味で俺に迫ってきている。
毎回、こうやって連れてこられては何かしらやられる。
『高尾可愛いなー。』
ニヤニヤ笑いながら、一歩、また一歩と俺の方に近づいてくる藍沢に、俺は後ずさるが空き教室の広さなんてたかがしれてる。
『行き止まりだなー。』
「本当やめろって!」
『なあ、高尾のこと好きなんだけど。』
肩を掴まれ、真剣な顔でそう言われて思考が停止する。
「は、は。俺は嫌い。藍沢のこと。」
『・・・自分に似た俺が嫌い?』
「っ・・・」
図星だった。
昔から誰とも衝突しないように、上手く上手く立ち回って行動するのに長けていた。
嫌なこと言われたってヘラヘラ笑ったり、冗談言って誤魔化したり。
楽だからそうしてたけど、そんな自分は、自分じゃないみたいで嫌いだった。
『俺はそんな高尾も含めて好きだよ。』
「やめろ・・・やめろよ!」
『いいよ。俺は好き。だから、もっと高尾の本音聞かせてくれ。』
何で俺のことそんな愛おしそうな目で見るんだよ。
『俺入学式の時緊張してたんだ。あんま友達作るのうまくないし。そしたら高尾が笑っておはよ、って言えば大丈夫って背中をバシバシ叩きながら言ってくれた。高尾にとっては気まぐれだったかもしれないけどさ。』
『俺は、高尾に救われた。』
藍沢の言うとおり多分気まぐれにした行動だった。そんなことしたっけ、と思う程に。
『好きだって迫ってみたんだけど、まあ嫌がられて。』
当たり前だろ。
『でも、それって高尾の素顔なのかと思ったら嬉しくて。』
「俺にとってはただの迫りくるドSの変態だった。」
二人になった瞬間どれだけ怖かったと。
『ゴメン。』
否定しないところをみると、自覚済みかよこの野郎。
『だから、嫌いでいいから。俺にだけでいいから。笑って、泣いて、怒って。』
「馬鹿じゃねーの。」
『ひでー!』
口を尖らせて文句を言う。
「んじゃあ、お言葉に甘えさせて色々言わせてもらうぜ?」
俺のその言葉を聞いて、藍沢はにぃっ、と笑った。
そこまで言われたらさ。
惚れちまう日も近いんじゃね?
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