短編夢
二度目はないけど(紫原生誕記念/男主/受主)
「ねー、俺誕生日なんだけど。」
『さっき大量に菓子あげただろ。誕生日おめでとう。』
家が隣同士の遊羽ちんは、通ってる学校は違うけど仲良しだ。
毎日どちらかの部屋から部屋に窓から侵入して遊んでいる。
凄く心地いい時間で大好きだったけど、ある日気づいたんだ。
遊羽ちんから楽しそうに他の男子や女子との話を聞くと面白くない自分に。
「けちー。」
『何だよ、他に何が欲しいんだ。』
言うだけならタダだと思った。
「んー、遊羽ちんが欲しいなー。」
『なーに言ってんだ。好きな子にそういうのはとっておけよ。』
だから、好きな子に言ったんだけど。
「遊羽ちんは好きな子いんの?」
『・・・、いる。』
毎日こんなに俺と過ごしているのに、遊羽ちんの心はこっちに向いてなかった。
遊羽ちんより小さくて、笑顔の可愛い優しい女の子、とかだったら。
そんなん勝ち目ない。お似合い過ぎる。
「ど、んな子?」
『うーん・・・言わないと駄目なのか。』
「うん。」
少し恥ずかしそうな顔をしながら、遊羽ちんは答えた。
『ちょっと意地っ張りで、わがままだけど笑顔は可愛い感じの子。』
そんな顔させる子は誰?
「やだ!」
『おい、敦・・・うわぁっ!?』
無理矢理、ベッドに押し倒して。
「ずっと、ずっと遊羽ちんを見てきたのは俺だもん。そんな女の子より、俺のが遊羽ちん好きだもん。」
分かってる。この恋が実る確率なんてゼロに近いこと。
でも抑えきれない。
遊羽ちんの顔に俺の涙が落ちていく。
「っ、ごめ、ん。ごめんなさい、」
大男に告白されて泣かれても困るだけなのに。
『敦。』
「ごめ、」
『好きなのは女の子なんて言ってない。ちょっと意地っ張りでわがままだけど笑顔が可愛くて、お菓子が大好きな泣き虫な子が好きだ。』
思考が止まる。
「それ、って」
遊羽ちんが起き上がる。
『まだ、言わせるのか?』
それって、自惚れていいの?
俺期待しちゃうよ。
だって、そんな少し照れた、拗ねたような表情で。
『敦が好きだ。』
「遊羽、ちん・・・」
『・・・返事は?』
「俺も、好きぃ・・・」
涙は止まらないけど、でもさっきとは違う涙。
『泣くなよ。お前も同じ気持ちで嬉しい。』
頬に軽くキスをされて。
「好き!大好き!」
『敦重いー。』
「重くない!」
『俺お前の笑ってる顔が好きなんだけど。』
重いと言われてムッとしてたらそう言われた。
「俺もだし。」
『ぶっ、はは、そうか。』
今までで一番優しい顔で遊羽ちんは笑った。
だから、俺もへらっと、笑って。
『じゃああれか。誕生日だし、プレゼントは俺?』
「今すぐどうにかされたいの、俺に。」
『・・・冗談です。』
あの時の俺の表情が怖かったと、後に遊羽ちんは語った。
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