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短編夢
これも青い春というものらしい(高尾/女主)
同じクラスの高尾くんに嫌い、と言われた。


私は特に彼のことは嫌いではなかったけど、流石に気持ちの良い話でもないので、何故?と聞いてみた。

「視界に入るとさ、腹立つんだよな。」

そんな理不尽な。対処のしようのない理由がまかり通るとでも思っているのかな。と、言いたいけど今のところ実害はないからどうとも言えない。


『まあ、あまり視界に入らないように気をつけるから。』



「何をやっているのだよ。」

「真ちゃん。何でもねーよ、部活行こうぜ!」

「・・・気をつけて帰るのだよ、遊羽。」


『うん、ありがとう。バイバイ。』

幼なじみの真太郎は、生真面目な変人だけど、仲は良かった。

さっきの話聞かれてないといいな。真太郎と高尾くんがこの話で仲悪くなっても私も困るし、なんてのんきな考えで帰ることにした。




『おはよー。』

「おはようなのだよ。」

「真ちゃんに、藍沢さんおはよーっす。」

高尾くんが昨日の宣言はまるでなかったかのように、普通に挨拶してきた。

私も昨日のことは忘れよう。


「時に高尾。」

「何?」

「お前は遊羽のことが嫌いなのか。」

まさかの真太郎がこの話を蒸し返してくるなんて。

紙パックのジュースを飲んでいた高尾くんは、中身を口から噴き出していた。

「何でだよ。」

「昨日言ってただろう。」

「立ち聞きなんて趣味悪いぜ?」

何か険悪な空気だ。

「お前こそ、遊羽は何もしていないのに腹立つとは何なのだよ。」

『あー!もういいから!多分私が何かしたんだと思うから!ゴメン高尾くん。』

この二人は部活で信頼しあっている仲らしいのに。

「適当に謝るんじゃない。お前は、何も悪いことはしていないのだよ。」

『私より二人が喧嘩する方が大問題でしょ。』

高尾くんの表情が苛立っているのが伺えてしまう。

「大体高尾が遊羽のことを嫌いなんていうのはあり得ない話だ。」

『え?』

「大方昨日も俺と遊羽が話してるのが気に食わなくて、嫌いなどという言葉が口から出たのだろう?」

ちらりと、高尾くんの方を一瞥した真太郎。


高尾くんは、目を見開いていた。


『えーと、それは、どういう、』

「ああもう!藍沢さんちょっと来て。」

『え、今から授業。』

「いいから。」

手を引かれてしまい。

「二限までには戻って来るのだよ。」

うるせー、緑間!なんて高尾くんが言うので、いつも真ちゃん呼びなのにと思ってしまった。

そしていつの間にか屋上についていた。



「あー、真ちゃんマジずりぃわあの言い方。」

『高尾くん?』

「・・・藍沢さん、ゴメンな。嫌いなんて言って。」

私の方に振り向いて、頭を下げる高尾くん。

『あ、いや大丈夫。』

「あー、かっこ悪・・・」

頭をかきながら、顔を赤くしていた。

それで何と無くわかってしまった。



『高尾くん真太郎のことが、好きなの!?』


「違ぇよ!?どうしてそっち方向で勘違いするんだよ!」

『・・・もしかして、』




「藍沢さんが、好きだ。」




高尾くんに嫌いと言われた時に、初めて二人きりになった。

それ以前は、真太郎を介して三人で話すことは結構あったけれど。

つまり、私と仲が良い真太郎に嫉妬していたということだったみたいで。

「藍沢さんはさ、真ちゃんのこと好きなんだよな。」

『誤解です。』

良く言われることなので、つい反射で答えてしまった。

『多分お互いに、手のかかる弟や妹みたいな、そんな感じで。』

「・・・本当、に?」

『う、ん。』

今になって高尾くんに告白されたことを意識してしまった。

「そっか。」

安心したように、微笑む高尾くん。

要領が良くて、コミュニケーション能力の塊みたいだと思っていた。

「二度とあんなこと言わないから、友達から、始めてくれる、かな。」

緊張した面持ちでそう伝える彼に断る理由等もちろん無くて。

『よろしくね。』

「ありがとな。じゃあそろそろ、戻るか。」



本当は気付いていた。

私を連れ出す時に高尾くんと真太郎がアイコンタクトをしたことを。

だから、二人で共謀して私を騙す気じゃないかなんて、少しだけ勘ぐってしまっていた。


でも、夏でもないのにやけに汗ばんだ熱い手で手を握られて、そんな気持ちは吹き飛んだ。

きっと、高尾くんの熱が伝わってしまっただけ、と自分の手のひらが温かいことだけはまだ認めないでおこうと思った。



【緑間視点】

高尾に、遊羽が好きだが、どう告白すればいいかと言われた。

仲が悪いわけではないが、多分遊羽は高尾のことをそういう意味では意識していないようだった。

だから、距離でも置いてみるのも手だと言ったら、高尾は勢い余って嫌いだといってしまったらしい。

普段、あのような高尾を見ることはないので多少青ざめていたのは見物ではあったが、幼なじみを傷つけろとは言っていない。

だから、カマをかけて話し合う場を設けてやった。

少し恨みがましい顔を高尾に向けられたが、意図を汲んだのかいつもの高尾に戻った。

しばらくして二人で戻ってきたようだ。


誤解は解けたようだが、遊羽、その表情バレバレなのだよ。

まあ、時間の問題かと思い俺は読みかけの本のページをめくった。

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